金魚 〜淡い恋物語り〜
この気持ちに気付いたのはいつの事かしら?
そういえば初めてアナタに遭ったのはお店の縁日での事だったわね。
わたしは数多いる金魚の1匹だったわ、わたしの仲間は沢山いる仲間と遊んでいて気がついてないみたいだけど、ときおり来る人間に仲間が1匹又1匹と攫われている事に気が付かない愚かな魚類。
ま、わたしも最終的にはアナタに攫われた訳だけど………うふふ、攫われたなんてなんだか情熱的な響きよね?
アナタは初めて金魚を飼うみたいだったわ、住み家の水槽はわたしが居るにはかなりの大きさだったもの店員さんの口車に乗せられて買ったのね?
まったくもうワタシが側にいたらひと言教えてあげたのに…水換えが大変じゃない。
あれからどのくらい経ったかしら? アナタはたびたび水草や隠れ家や橋などの置き物を買ってきてくれたわ。
アナタあまり置き過ぎないでよ水槽が狭くなっちゃうわ、まだすごしやすいから良いけどオンナに贈り物は良い男の条件ね、ワタシはアナタに愛されてると感じた日だったわ。
今日はワタシとってもプリプリ怒っているわなぜって?
アナタが他の魚類を買ってきたのよ、まったくワタシだけじゃ物足りないというの?
ワタシは金魚の中じゃ派手じゃないわ、割りと地味な方よ、アナタが買ってきた魚類はヒラヒラの派手な金魚だもの。
まったくワタシが懐の広い魚類じゃなかったら、許さなかったわ感謝しなさいよ。
それでもこの水槽の主みたいなものだから後輩の子達には、キチンと躾はさせていただきますけどね、怖いなんて言わないでよあくまでも常識を教えているだけなんだからね。
アナタの正妻はワタシなんだから………あら妻だなんて種族が違うのにワタシったら…うふふ♡
ワタシもいずれ死んでしまうわアナタとでは寿命が違うもの、本当ならワタシも伴侶の魚類と夫婦になって子供を産んで、その子をアナタに育てて貰いたいけど、ワタシはアナタ以外には伴侶は要らないわ、たとえこのまま死ぬ事になろうとも。
ワタシが死んだらアナタは悲しんでくれるかしら?
ただの魚類のワタシに………ワタシが死んだら今度は人としてアナタの側にいたいわ。
生まれ変わって必ずアナタに逢いに行くんだから………たとえ逃げても逃さないわ、だってワタシを惚れさせたアナタが悪いんだもの♡
最近身体の調子が悪いわ遂に寿命が来たのね、あらアナタ顔色が良くないわ、ワタシの事を悲しんでくれるの?
うふふ、大丈夫よワタシが死んだら生まれ変わってアナタに逢いに行くだけなんだから、ただワタシが死んだあとの後輩の魚類を大事にしないと許さないわ。
遂にワタシは水底に沈んで行くでも悲しくはないわ、今までアナタの愛でとても充実した魚生を過ごせたのだから、あらアナタに涙は似合わないわ最後には笑って見送ってね、ワタシは少しの間眠るわ次に目が覚めた時はアナタの笑顔で迎えてね。
それじゃあ元気でね。
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………………………………………さようなら。
Fin