第九幕 暴君、鼓動 後編
暴君が叫び、その手に持つ大剣でハイルを貫こうと猛スピードで剣を突きだす。
ハイルはその突きを雷龍の柄で受ける。
刹那、それらが触れ合う瞬間凄まじい閃光と爆音がし、彼等の周囲にあるものが全て消し飛んだ。
彼等の足元を除くと彼等のいる場所は少し浅めのクレーターが出来ており、その時起こった爆発のエネルギーの凄まじさを物語っている。
「ほう、面白い真似を出来る様だな・・・」
(つ、強い・・・こいつ、本物の化け物か!?)
ハイルは内心かなり恐怖を感じていた。
それもそうだろう、彼女が戦ってきた悪魔はどれもせいぜい下位~中位の悪魔だった。
上位の悪魔はたまに戦って勝てばよしと言う考え方でもあった。
しかし、今目の前にいる敵は上位以上・・・高位の悪魔で、しかも大方魔王クラスの悪魔と予測していい。
更に現状はここでこいつを倒さねば、こいつは町に飛び出しとてつもない被害を町に出すだろう。
その為、逃げるに逃げれない状況下なのだ。
「へへ、死ぬこと覚悟するか!」
ハイルは大剣を押し返すと即時に居合いの構えをとり、間を取らず三発の鉄鬼を瞬時に放った。
べリアルはこれを難なく交わし、蒼い焔を纏わせた大剣をまるで棒切れでも振るかのごとく、人間では見ることができない速度で横に凪ぎ払った。
ハイルはその燃え盛る蒼き刃にタイミングを合わせ飛び、その刃に飛び乗った。
その刃の速度を利用し、腰にあるガンホルダーからアサルトとフロストを引き抜き、べリアルの脳天にぶっぱなす!!
しかし、彼は慌てることなく地面を踏み、その地面を溶解させ、マグマと化した地面を吹き上がらせこれを止める。
塞がれたことを知ったハイルは即座に大剣から飛び退き、背後にあった壁を蹴り、べリアルの背後に回る。
「Scum!!(クズが!!)」
背後に回り、即座に斬撃を叩き込む。
だがそれを待ってましたとばかりに、べリアルは地面を強く踏みしめ、宙に跳ぶ。
空を切ったら斬撃は彼の前にあった祭壇を切り裂いただけだった。
「殺る気あるのか?」
彼は宙で剣を振る構えをとり、そのまま縦回転し、まるで高速で回る歯車の如く刃と共に回り、ハイルの背中の一部を削ぎ落とした!
「うっ!!クソ!!」
傷口から、まるで焼かれているような熱さと痛みが伝わる。
実際焼けているのだか、今のハイルには確認の余地はない。
続いてべリアルは地面を強く踏み、地響きを起こす。
「FLAME!!(燃えよ!!)」
その言葉に反応してか、ハイルの足元が僅かに赤く輝く。
(ヤバ!!)
ハイルは急いで飛び退く、と同時にそこからまるで噴火した火山の様に火焔が吹き上がった。
しかし、それはべリアルの罠であった。
刹那、なんとべリアルはその身体からはとても考えられない速さでハイルまで突っこんできたのだ。
「Haaaaaaaaaaa!!」
その速度の乗った大剣を力任せに振り抜き、ハイルを両断しようとする!
ハイルは回避を諦め、その狂剣を雷龍の鞘で止める。
「Yeeeeeeeeeyaaaaa!!」
それを弾き飛ばし、彼女は刃を振るう!
と同時にべリアルも刃を振るう!
二つの刃が音速でぶち当たる、何回も何万回と、そのたびにハイルは傷だらけになっていく。
それもそうだ、べリアルの斬撃が速すぎて、ハイルは全部見えていないのだ。
だから致命傷になるであろう物だけ防ぎ、あとは身体で防いでるのだ。
(あんなデカブツをこんな速度で振り回すとか、本当こいつは化け物ね・・・)
そのボロボロのハイルに比べてべリアルは傷一つない。
全て見られているのだ、ハイルの斬撃が。
「ハァ・・・つまらん」
べリアルはそう呟くとハイルの足を蹴り払い、大きく体勢を崩させた。
「なっ!!」
「die・・・(死ね)」
そしてべリアルは全体重を掛け、渾身の突きを繰り出した。
ハイルにそれを交わす事など出来る訳などなく・・・・
蒼き焔がハイルの胸を貫いた・・・・
悪魔紹介!!
べリアル
かつては影世界の魔帝の座に就いていた高位悪魔。
ある日とある悪魔に下克上を受け、封印されてしまう。
人間を食料と考え、人間で遊ぶ悪魔を処刑するなど、悪魔にとっては自由を奪っているように感じる政策ばかりだしていた。
我々人間にはありがたい政策だか・・・
封印された影響でかなり弱体化しているが、炎獄の伯爵の名に恥じぬ強さは未だに健在のようだ。
こいつに出会ったら死を覚悟しな。
絶対に勝てねぇて断言してやらぁ。




