第七幕 対決、視えざる者 ファントム!!
さて、前回までのハイルの私生活は?
勇町に来てから数時間、ハイル達は悪魔を斬り殺し続けていた。
しかし、そんなとき何故か聖銀弾を使う悪魔が出現し、ハイルが負傷する!
危機的状況でありながら城助は冷静に対処し、見事悪魔の追撃を逃れたのだった。
だが、何故悪魔が聖銀を持ってたのか?
謎がますます深まるだけだった。
さてと、長ったらしい前置きは置いときましょう♪
さぁ、今宵は悪魔と踊りましょう!!
皆さん御一緒に!
アインス、ツヴァイ、ドライ!!
ハイルの傷が治った後、俺達は迷う事なく体制を立て直し、とある廃ビルで作戦会議をしていた。
「さてと、厄介なのはあのスナイパー型の悪魔だな、このままじゃあハイルは只の女の子だ」
「それは言い過ぎだと思うけど・・・確かにそうね、このままじゃあ私、足手まといになっちゃう・・」
どうしようかとあーでもない、こーでもない、と俺達が交互に案を交わしていると、ハイルが
「ところで、悪魔って聖銀は使う事は出来なくはないけど、造る事はできないんじゃ?」
と言った。
・・・完全に盲点だった、確かに悪魔には聖銀は造れない、作っている最中に大量の聖水を浴びて仕舞うからだ。
あれは造った後びしょびしょになるから自分は困っているが、悪魔はそのせいで聖銀を造れない、造るさいにでる聖水のせいで死んでしまうからだ。
「ちょっと待て!という事は、この事件には人間、それも祓魔師が裏で絡んでいる事になんぞ!」
そう、聖銀を造れるのはその手の知識を持っている祓魔師だけなのだ、そのため悪魔が聖銀を使う=祓魔師の裏切りとなる。
「まさか書師隊が依頼を頼んだ理由は本当はこれ?」
ハイルが言った、その意味は悪魔から人間を護るべき祓魔師が悪魔と吊るんでいるという事を、秘密裏に削除してくれというのが書師隊のこの依頼の真の意味だというものだったのではとハイルは考えた。
「まだわかんねぇ、だけど少しこの事件の裏側が見えて来たぜ・・・」
悪魔の大量発生、聖銀を使う悪魔、バチカンからの依頼、祓魔師、これだけのキーワードがあればその手の人間なら普通こういう結論に行き着くだろう。
祓魔師が裏切ったと。
だが俺はそれすら裏がある様に思えた。
あれから数分後、俺達は廃ビルを出て、公園に向かっていた。
何故?それはその公園は現在悪魔達のたまり場である可能性が高いからだ。
まず、俺達が倒した悪魔達は皆その公園の方角から来ている、次にその公園で黒い服を着た男を見たと言う報告を住民方に聞いた、最期に聖銀弾のような薬品を使って造る物は広い所で行わないと事故を起こす可能性があるからだ。
だから公園にもしかしたら、と思って俺達は向かっていた。
幸か不幸か、はたしてそこには一人の黒い服を着た男がいた。
「いた!おいお前、何をしている!」
「ちっ!もうバレたか!」
黒い服の男は呟く。
「生憎、貴様らの相手をしている暇は私には無いのでね、ファントム!」
男が叫ぶと、何もない空間からワニの頭を持った悪魔が出てきた!
「後は任したぞ、私は例の場所に向かう」
「御意」
ファントムにその場を任し、黒い服の男が消えた。
「ハッ!待て!」
「城助!先にこいつを!!」
そうだった!俺は一度黒い服の男を諦め、ファントムと向かい合った。
ファントム、幻影の名を持つ中位悪魔、普通の召喚師が喚べる代物ではないが確かにこの場にいる、その事が俺に恐怖を抱かせた。
「あの黒服を逃がしたら不味い、行くよ城助!」
ハイルが叫ぶ、俺はそれに相づちをうつ、戦闘が始まる寸前だった。
「ふん、こんな餓鬼の相手にこの俺が喚ばれるとはな・・・」
ファントムは心底嫌そうな顔をした。
「あ、そう・・・生憎私はあんたに餓鬼呼ばわりされるほど弱くはないよ!」
ハイルはそう叫び、胸元から雷龍を引き抜き、ファントムに斬りかかる!
その様はまさに稲妻のごとし、僅か約0.1~2秒の事だった。
しかし、ファントムはこれを冷静に対処、身体を捻り回避し、回避時の勢いを使いハイルの背中に凄烈な一撃を食らわそうとした。
だが、ハイルはそれを見切り雷龍の鞘でこれを受け止めた!
この一合で互いに体制を立て直し、そのまま斬り合いになった、ハイルは太刀、ファントムは槍、互いの得物はこうなっており、太刀であるハイルが不利なのは誰もが視て取れた。
数合目、ハイルはファントムの連撃を交わすと、後に下がり鉄鬼を放つ!
一つ、二つと確実に相手を殺す斬撃の渦は的確にファントムを切り刻んだ。
「小賢しい真似を!」
ファントムは斬撃を受けながらも止まる事を知らず、そのまま槍をつがえ渾身の一突きを放った!
だが、ハイルは焦らず腰から二挺の銃を取り出した。
その銃は様々な箇所に紋様が刻まれており、かつハイルの魔力のせいか左の銃は風を、右の銃は冷気を放っていた。
彼女はその二つの銃を巧みに扱い、暴風と冷気を纏った銃弾をファントムの身体に叩き込んだ!
「ぐおぁ!?」
その一撃(?)はファントムの頭に当たるはずだった、しかしファントムはそれを辛うじて槍で銃弾の弾道をそらした。
ファントムの咄嗟の判断のため銃弾は大きく逸れ、ファントムの右腕を掠めるだけだった。
「くっ!やりおるな小娘」
「鍛えてますから!」
ハイルはそう答えるとその両手にある銃を構えトリガーを引いた。
銃から撃ち出された弾丸は迷う事なくファントム目掛けて螺旋を描き飛んで行く!
「威力は高そうだが、単発ではなぁ!」
ファントムは飛んで来る銃弾をその槍を使い全て叩き落とした。
しかし次の瞬間、銃弾が暴嵐の様にファントムの頭上から降り注いだ!
先程の場所にハイルはいない、ハイルは既にファントムの頭上にいた!
そして暴嵐の様な弾丸の嵐の正体は、なんと身体を逆立ちしたように空中で逆さまになり、克つ身体を捻り、回転しながら銃のトリガーを引きまくり、マシンガンの様に銃弾を吐き出させ続けるハイルだったのだ!
「がはぁ!こっ小娘ぇぇ!!」
「ハッ、単発が駄目なら複数撃てば良いことよ!」
着地、そのまま斬撃、そして鞘に収める、僅か3秒。
その3秒でファントムの左足が消えた。
否、斬れた。
「うごぁぁ!!」
ファントムの巨体が倒れる、ハイルの斬撃と銃撃でついに力尽きたのだ。
「はぁ、手間かけさせて・・・さぁ、あの黒服の事教えてくれる?」
ハイルが言った、雷龍の切っ先を彼の喉元に突きつけて。
「くっ、小娘に殺られるとは・・・だがな小娘、貴様の問には答えられん、ここで我と共に・・死ねぃ!」
突如ファントムが右足だけで地面を強く踏み出し、まだその手に持ってた槍でハイルを串刺しにしようとした!
「っ!馬鹿!!」
ハイルは槍の刃ではない棒の部分を斬り飛ばし、そのまま勢いに任せてファントムの脳天に刀を振り下ろした。
斬り飛ばされた槍の刃が地面に刺さる、それと同時にファントムは灰に還った。
「馬鹿野郎・・・どうして、私達悪魔って奴は、分かり会えないのかな・・・ねぇ城助」
「俺にもわかんねえ、どうしてだろうな、少なくともハイルは違うよな」
城助はそう答えた。
辺りはもう既に真っ暗な夜だった。
久し振りの悪魔紹介!!
ファントム
影世界の血海に住まう中位悪魔。
中位悪魔中でも弱い部類に入る、こいつを倒せないならデビルハンターになるのは止めときな。
ファントムは影世界に数えきれないほどいるからな。
ちなみに、ファントムは固有名ではなく出世魚のように成長によって名が変わる。
ブレイス
↓
キングブレイス
↓
ファントム
という感じだ。
ブレイスはかなり弱く、倒すならこの時だな。




