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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

万華鏡

忌み名

作者: 花鏡

忌み名の由来は知られていないけれど、どこかにあるという話。

5柱の神々は=創造神のようなもの。5柱の神の孫までが神様や神様的な存在、それ以降は人ならざるもの。

バットエンド的で後味残るので苦手な方は戻るボタンを押してください。

読みにくいのは・・・ごめんなさい。戻るボタンを押してください。

 子が生まれる?


 名前は・・・か。その名前は忌み名だから止めた方がいい。


 幸せになれるように。素晴らしい人になるように。偉大な人物の名前をつけることもあるだろう。


 だから忌み名には気をつけて。


 忌み名をつけると不運になってしまうから。


 古いと言われるかもしれないが、どうにも忌み名の子は不運に見舞われていたり長生きしないからね。


 だから途中で改名する子もいたんだ。改名するだけで驚くほど何事もなく不運も収まる子がいたんだよ。


 信じる信じないは自由だが。ああ、改名した子の話は聞いたことがあるのか、だから気になるんだね。


 なぜその名前が忌み名なのかを知りたいと?


 話はあまり上手くないがそれでもいいなら。


 丁度良いから休憩にしようか、少し長くなるからね。


 忌み名はいくつもあるのだから。


 では、君が選んだ名前の話からはじめようか。


 ヘゼラ国というのは知っているかな?


 そう、5柱の内2柱の神に愛され500年続いたヘゼラ。


 寵愛か努力か未だ歴史家達で物議になっているがそこは置いておこう。ヘゼラは戦争に巻き込まれることなく、大きな災害も飢饉や疫病もなく続いた国が、あることで神々の不興を買い、たった2年という瞬く間に滅びた。ここまでは大体どの国も同じように歴史書では書かれているんだよ。


 どの国も驚愕した出来事だったからね。元凶になった国王と寵姫の名前が忌み名になっているんだ。


 だがどの歴史書も忌み名は載せない。ほとんどと言っていい国がその忌み名を秘匿し、役所では名前で受け付けないリストに入れるだけにしているんだ。


 なぜかはその国々の思惑もあるからなんともいえないが・・・面白半分でその名前をつけられ、神々の不興を買いたくないということだけで続いている・・・そんな単純な理由だと思うよ。


 神々が人の世に干渉をしなくなったといっても皆無ではないからね。気を付けるに越したことはない。


 と、すまない、話がそれたな。


 その忌み名となった国王は再婚することとなった。勿論相手は同じく忌み名となった寵姫だった。


 寵姫は大層な美人で、1柱の神の子が恵みを授けていた一族の出だった。


 国王には前王の遺言で建国からずっと付き従っていた公爵の出の正妃がいたんだ。だが国王は正妃を嫌って仮面夫婦状態。寵姫にぞっこんで結婚したかった国王はなんとか公爵を追い落とす必要があった。公爵家はその善政や人柄で、下手すると王家よりも民衆に人気があった。そこも国王には気に入らなかったんだろうね。


 当然他にも公爵家が目障りと思う貴族達がいたわけで・・・その貴族と国王は結託し、色々無理難題を押し付けた。


 だが公爵家や公爵家に味方する貴族達の立ち回りで無理難題は片付けられた。


 上手く追い落とすことのできない為短絡的な手段に出たんだ。


 公爵の代替わりで正妃の双子の兄が位を継いだとき、新しい公爵と正妃を毒殺したんだ。


 特殊な毒で内臓を溶かすものだったと記されているね。なぜ毒殺だとわかったかって?それはもう少ししたら話に出てくるよ。


 国王と国王につく貴族・・・国王派と呼ぼうか、面倒だし。彼らは公爵と正妃は神々の不興を買ったため神が罰したと発表したんだ。自分達の手で殺しておいてね。


 都合の悪いことは強引に天罰が下ったと、国の中枢では頻繁ではないだろうけど、そういう発表は間々あったらしい。


 公爵家は取り潰し、正妃はいなかったものとして正妃ではなく罪人扱いで葬儀もないという扱いだったらしい。


 公爵の領地や善政を知っている民衆は不満を抱えつつも、受け入れるしかなかった。


 そして国王と寵姫は公爵と正妃のことはなかったものとし、新たに結婚をした。


 それはそれは盛大な結婚式で、各国の貴人達が数多く招待されていた。


 煌びやかな大広間・・・そこに5柱のうち2柱の神が光臨した。


 国王達はこれは祝福だと、最初は思った。


 5柱の神々は滅多なことで姿を現さないからね。でも皆無ではなかったから神の像は結構精密で、誰もが5柱のうちの2柱の神だとわかった。


 神の出現・・・そう、想像通り実は怒りのため姿を表した・・・ということになっているが、神々は表情というものはなかったらしい。


 これは招待された他国の貴人達の殆どが残した文献で、そのどれもが同じような言葉で記してあったそうだ。


 2柱の神々が纏うその衣を払うとそこには、毒殺されたはずの双子である兄公爵と妹正妃の姿があった。


 2柱の神々は交互に告げた。


 神々が寵愛していたのは国や王家ではなく、公爵の一族だったこと。


 神々の寵愛に驕ることなく、公爵家は王家を敬い、民達を思い、慈しみ、様々な地道な努力を長い年月変わることなく行ってきていたことを。


 そして一族最後の子となった双子は、5柱の内の1柱の子でもあったことを。


 公爵家最後の双子が、毒を飲まされ人としての死を迎え神として生まれ変わってしまったことを。


 神々とはいえ我が子と愛した公爵家への様々な仕打ちに対し怒りがあることを。


 国を慈しむ気もなくなりむしろ滅ぼすつもりであったが、神へとなった双子が望まない為、守護を止めるだけに留めることを。


 神々が人を、その一族を寵愛することを止めることを。


 正妃であった双子の妹が口を開いた。


 器用ではなかったが、国王を愛していたことを。


 国王と寵姫の結婚を進める為に離縁し、正妃の座を降りる手続きをしていたことを。


 何度目かの離縁要求に赴いた国王の執務室で国王自らの毒によって命を落としたとき、愛しい思いも全てなくなってしまったことを。


 双子は声を揃え、ヘゼラに別れを告げると神々はその衣の中にその姿を隠し、姿が消える。


 各国の貴人は我先にヘゼラを離れた。神の寵愛を失したことを国に持ち帰るために。それぞれに対応するために。


 大広間での神々の光臨、そして公爵一族の話は恐ろしい程の速さで民衆に広まり、暴動となった。


 あっという間に国王と寵姫、国王派の貴族達は広場に引きずり出され、断頭台の露と消えたという。


 守護がなくなった為か、天災、飢饉、疫病の流行でそれまでの繁栄が嘘か幻のように消え、民は国を捨てヘゼラという国はなくなった。

 

 招待されていた各国の貴人達は言葉で言い表せない恐怖を味わったらしく、元凶となった国王と寵姫の名前を禁忌、忌み名とするのに時間はそんなにかからなかったという。


 そんな縁起の悪い名前を付ける親はあまりいなかったが、面白半分に付ける輩っていうのはたまにいてね。


 なぜかその名前を付けると周りにも累が及ぶほどの不運が連続したり、内臓が溶ける病になったり・・・呪いじゃないかといわれるほどなんだ。


 そうだよ。特に病は、ヘゼラと名前がつくほどの奇病認定された。神の子達が飲まされた毒薬の症状で解けたものだったが、奇病のヘゼラはその国王と寵姫の名前を持った子供だけ、かかるんだ。


 神々の不興を買った名前に対して、神々が直接手を下さなくても面白く思わない不可思議な存在だっているかもだしね。なにせ神々がいるくらいなんだから。


 疑うなら今度資料を持ってきてあげるよ。忌み名に関する呪いとも取れるものは色々そろっているからね。


 まあ・・・名前は気を付けた方がいいってことだよ。


 国によって発音が違ったりするけどね・・・だから気をつけなくちゃいけないんだ。


 なぜ秘匿されてる名前を知っているかって?

 

 それはね・・・・・・と思わせぶりな口調でいってみたけど、理由は単に従兄弟が医療関係の研究所にいるからなんだ。


 まあ、名前で困ってるなら今度縁起の良い名前のリスト持ってくるよ。


 縁起の良い名前の話も希望なら、そのときにでも説明するよ。


 さて、それじゃ仕事の続きでもしようか。

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