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  作者: アーク荒神丸
1/1

1:プロローグ

どうも、荒神丸です。


ちょっと息抜きで暇潰し小説を書いてみました。息抜きなんで更新速度はかなり遅めです。

読者皆様もたまに暇潰しで見て、「あ、今日は更新されてる」程度の感覚でご覧下さいませ。








※この小説はフィクションです。

実在の国名や組織名、人物とは全く関係ありません。

また、この小説の舞台は完全に架空の場所です。実在の地名が出る場合もありますが、それはただのネタ被りですのであしからず。

「発掘作業はどうだ?」


 男は照り付ける太陽の陽射しを手で遮りながら、自分の足元で黙々と作業を続けていた発掘員に尋ねる。

発掘員の男は地面を鶴嘴で掘る度に巻き起こる埃にむせ返りながら答える。


「…駄目ですね、まるで歯が立ちませんよ。

この辺りの地面はやたら固いですから、畑耕すのとは訳が違います。それこそ重機でも持ち出さないと…」


「君達には同情するが、採掘機は予算の都合上こちらには寄越せないそうだ」


 発掘員は一度鶴嘴を地面に起き、男に向き直る。

男は太陽を背にしているため、発掘員は光に少し目を細めながら黒いシルエットとなっている男を見上げる。


「そんな事言われても、こう地面が固いとどうやってもこの辺全部掘り起こすには半月掛かります。

重機が駄目ならせめて採掘期間の延長を頂かないと」


「言っただろう、予算の都合でこれ以上の期間延長も機材の追加も無しだ。

糞を口から垂らす暇があるなら早く手を動かしたまえ。我々もいつまでもここに留まっている訳にはいかんのだ。

文句があるなら予算をけちったクライアントに言え」


 発掘員は何か言い返そうと口を開きかけるが途中でやめ、やれやれという様子で再び鶴嘴を手に取り、発掘を再開する。

途中で「言う方は楽でいい」とボソリと悪態をついたが男は、そんな事には気にも掛けず作業に戻った発掘員を尻目に目の前の荒野に視線を戻す。


 地球の赤道よりやや上に位置する場所にあるこの荒野は赤色の硬質で乾燥した地面が広がり、日中は強い陽射しに照らされ地面の養分も乏しいため草木はほとんど生えず、環境は非常に劣悪な地域だった。

何故彼等がこんな場所で発掘作業に従事しているかというと、この地にはかつて、あらゆる国々が争いながらも求め続けたという秘宝が眠っていたという神殿があると言われ、彼等はあるクライアントからの依頼によりその神殿の発掘作業を行っていたのだ。

しかし採掘の責任者であるこの男、マーク・ビーンズはクライアントから発掘を請け負ったただの穴掘りであり発掘に関してはプロだったが、歴史的文献を鼻紙に使う程考古学には全く興味の持てない人物だった。

当然、この地に眠る秘宝になど興味の欠片も無く、ただ何万という大金になるガラクタが地面に埋まっているという認識しか彼にはない。

 早くこんなくだらない穴掘りなど終わらせて、自宅で冷えたビールでも飲んでゆっくりしたいと思いつつ、不機嫌な様子を隠す事なく彼は鶴嘴を振るう発掘員達に不備が無いか見渡す。

皆、地域の劣悪な環境に苛立っている様子で、中には先程の作業員の様に不平不満を漏らす者も少なくない。

この手の大規模な発掘作業に必要な発掘用重機の数が足りないからだ。

というのも、発掘に対するクライアントの提示した予算の額が必要最低限しかなかった事が主な原因だろう。


 マークは今更ながらに後悔する。あの時、南国でのバカンスを楽しんでいた自分にクライアントがちらつかせてきた巨額の小切手に釣られさえしなければ、こんな地獄の底のような場所で鶴嘴を振る作業員達に声を張り上げる労力を使う事も無かったのに、と。

いや、ただそれだけなら幾分かマシだっただろう。事実、提示された報酬額は一ヶ月博打で遊びほうけてもまだお釣りが来るほどなのだから。

だが、“それだけ”だった。

思わぬ大金に有頂天になりすぎて契約内容の確認を怠ってしまったのか、実際に発掘の為の準備に取り掛かった時にマークは唖然とした。

報酬と発掘の予算が別個では無かったのだ。

つまり彼が報酬の小切手に書かれていた数字は、発掘に必要な機材、人員の調達費用を含めての金額であり、実際に彼の手元に渡る金は発掘に必要な莫大な予算を差し引いた僅かな端金でしか無かった訳である。



 してやられた。


 彼が後悔した時には既に遅く、手際よくクライアントの差し出した契約書にサインしてしまった手前、更には騙されたと認めたくない己のプライドから、彼は自身の取り分が赤字に成らぬ程度の本当に必要最低限度の予算で人員と機材をかき集め、現在に至る。


「おい、そこの二人!誰が休んでいいと言った!呑気に口から煙吹いてないで持ち場に戻れ!」


 マークは、地面に掘られた竪穴に伸びた溝に隠れこっそり煙草を吹かしながら休憩を取っていた作業員二人を見付け怒鳴り付ける。

そして、被っていたテンガロンハットを一度直しながら思う。


(早く終わんねーかな……)


 本当なら今頃、砂浜のビーチで葉巻をくわえながら水着美女を眺め、冷えた飲み物でも飲んでいただろうに、少し欲に目が眩んだばかりに、赤黒い砂か土かの地面の上で葉巻をくわえながらむさ苦しい汗まみれ土まみれの男達を眺めながら怒声を響かせる事になるとはなんとも災難な話である。


 そんな中、一人の作業員が大声をあげる。


「何か出たぞー!」


 どうやら作業員の一人が何かを掘り当てたらしい。野太い男の声に皆が一斉にその作業員の元へと集まる。


「ちょっとどけ!」


 マークも作業員が集まっている場所へと人を掻き分けながら進む。

人の集まる中央にたどり着くと、そこには赤々としたこの土地特有の土より少し色の薄い地面の層からほんの少しだけ何かの黒っぽい色をした人工物らしき物体が顔を覗かせている。


「よし、こいつを掘り出すぞ!道具を持って来い!」


 マークの指示が飛ぶと同時、作業員達がそれぞれノミやハンマーを持ち出し人工物の周りを丁寧に削ってゆく。

先程まで指示を出していたマークも、作業員達と共にノミをハンマーで叩く。

小気味よいリズムの金属音ともに徐々に人工物の全貌が明らかになっていく。

掘って見れば周りにも様々な何かしらの建築物と思われるものが姿を現す。

そんな中、最初に見付けた人工物の全体像がようやく現れる。


 それは、何かの箱だった。


否、箱と断言するには少々見た目がシンプル過ぎる。

何の装飾も無い凡そ八センチ程度の立方体がそこにはあった。


「ようやく御対面か。これは、報酬の上乗せぐらいは期待出来るかな」


 マークは土だらけの手で同じく土にまみれたその立方体を手に取り呟く。

考古学に興味は無い故この立方体に如何程の価値があるかはマークにも判らない。

ただ、こいつは金になる。そんな予感を確信を彼は抱いていた。
















 この時、私は気付くべきだったのかも知れない。


 いや、気付く余地などありはしなかっただろう。


 自分が一体何を掘り当てたのか。


:マーク・ビーンズの日記より

もしかしたらなんか後書きのコーナー作るかも。

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