表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/111

第九十四話 土台





「ミヤコちゃん最近落ち着いてるね」





最初会ったときなんて、めちゃくちゃ荒れてたのにね、と日向はレポートを書きながら言った。





「…確かに」





最近はなんだか自分でも心の波が穏やかになった気がする。





なぜだかわからないけれど、穏やかに暮らせている気がする。




だけど、身売り、人身売買、ゆうりを煽った現実は変わらない。





「………」




「あれ、久々に見れるのかな?

あのミヤコちゃんが」





「…うるさいわね!」





ミヤコはスマホを開き、飛行機に乗る前に妹と撮った写真を拡大した。

今は亡き妹の顔写真を撫でて、目を伏せる。




「わたくし…私の卒業旅行に付き合わせたばっかりに…百合に…」





「かわいい妹さんだね。

ラナの方がかわいいけど」




「いちいち言わなくて結構よ」





ミヤコはスマホを閉じ、日向を見つめた。




「…ほんとにラナさんのことが大切なのね」




「うん」




「いいわね。

私も、それくらい姉や妹が大切だったわ。

父と母も」




「?

妹さん以外は生きてるんでしょ。

会いに行ったら」




「行けないわよ。

行ったって、私はもう、顔も違うし。

家族はみんな警察だもの」





「いいじゃん。

ミヤコちゃんはミヤコちゃんなんだから」





案外あっちから気づいて抱きしめてくれるかもよ、と日向は言った。




「いいえ、そんなことないわ。

私だけの身売り…だけならまだしも、人の臓器まで売っているんだから」




「ふーん…

僕はもうママもパパも、太陽もお星さまだからな」




「……それは」




「いいよ、別に。

僕は過去は見てないから」




「前にも聞いたけど…

日向は、ラナさんに忘れられて、悲しくないの?」




「?

ラナが忘れても僕が覚えてるから、大丈夫だよ」




「……すごいわね」




「なにがだろう。

ラナが忘れても、僕は覚えてる。

それで充分だよ。


それに、また友達からはじめればいいだけだよ」




「…よくそんな一途でいられるわね…」




「ミヤコちゃんだって、梅くんのこと好きじゃない。

それと一緒だよ」




「…そうかしら」




あなたって今どきでいう…




「ヤンデレ…ってやつなの?」




「それをいうなら、ミヤコちゃんはメンヘラだね」




「な、なんですって!?」




「だって、梅くんに呼ばれたらすぐ駆けつけるし、梅くんの言動や行動で情緒がすぐ不安定になる。

典型的なメンヘラだよ」




「な、な、……っ


そ、そういうあなただって…!


どうせ「ラナさんを監禁して僕だけのものにする…」とか言うんでしょ!?」




そういうの漫画とかで読んだわよ!とミヤコはドヤ顔を浮かべた。




「!?

そんな酷いことするわけないじゃないか…

ミヤコちゃん、病んでる…!?」





「えぇ…


わかったわ、ラナさん以外の人間なんていらない、みんな消してあげる。僕だけを見て…とか言うんでしょ!?」




「言わないよ。

大体、みんな消したらライフラインが止まってラナが困るじゃないか。


ミヤコちゃん、やっぱり病んで…」




「えぇ……」





なんでそこの常識はあるんだ。

変わった男だと、ミヤコは思った。




「もちろん、僕とラナだけの空間がほしいとは思ってるよ。

だけど、ラナにはいろんな経験や体験をしてほしい。

それを見守りたい。

ラナには自由でいてほしい」




「自由…」




「そう。

ラナは笑顔が1番素敵なんだ。


だから笑顔を奪うことは、絶対しない。



だから笑顔を奪う奴は、消す。


それだけ」




「いいわね、ラナさんは…」




私も誰かをそう思いたいし、思われたいわ、とミヤコはつぶやいた。





「案外、もう思われてるかもよ」




「え?

そんなわけないでしょ」




「なに言ってるの、この組織は美しい容姿、特別な才能や能力がないと入れないんだよ。


つまり、ミヤコちゃんは魅力的な人なんだから。

自信持ちなよ」




「……ありがとう」




まぁ、私は整形だけどね、とミヤコは皮肉った。



「?

整形だから?

なんなの?」




「え…

だから貴方たちみたいに天然の美しさは…」




「整形のこと魔法かなんかだと思ってる?

まず土台がよくないと。


ミヤコちゃんは骨格が華奢で、顔も小さい。


見た感じ、骨は削ってないよね。

それは整形では手に入らないものだよ」




「そうだけど…」



「さっき見た妹さんと顔似てたよね?


そもそも百合ちゃんに選ばれた、ってことは相当の美貌の持ち主だと思われたってことじゃない」




「それは…そうかもしれないけど…」




「梅くんの腕がいいのは大前提だけど、それはミヤコちゃん本来の美しさを活かしたんだと思うよ」




じゃなきゃ、梅くんがわざわざ動かないでしょ、と日向は断言した。





「ミヤコちゃんの美しさが、梅くんを動かしたんだよ」




「……!」




「だってさ、梅くんて。


美しいものしか触らないじゃん」




患者としてお金払ってないのにわざわざ再建したんだから。




その言葉に、ミヤコの目から涙が溢れた。




「それにさ、顔だけじゃなくなにか他にもあったかもね」




「………?

なにかしら………」




「梅くんが好きそうなもの…

姉妹愛とか?」




結果的に患者ってポジションになっちゃっただけでしょ、と日向は言った。




「そんな考えてるかしら…

気まぐれだったと思うけど…」




「まぁ、そうかもね」




梅くんは謎多いからなー、と日向は伸びをした。




「ま、梅くんについて深く考えてもね。

特殊だから」




「貴方が言う?」




「え、僕は普通だよ」




梅くんなんかと一緒にしないでよ!と日向はムッとした。





「私から見たら2人とも、同じくらいなに考えてるかわからないけど…」




「えっ、嘘でしょ」




「ふふ、まぁいいわ。

ありがとう、日向」





今日は私が料理作ってあげる、と言うと日向は、梅くんと違うとわかるまで離さないと言った。




「案外子供ね」




「それはミヤコちゃんでしょ」




「はいはい」




ミヤコは日向を軽くあしらって、厨房に向かった。

この後、梅の仕事を手伝わなければいけない。

けど、今日はもう泣かずに済みそうだ、とミヤコは感じた。

片栗ゆうりのビジュアルを公開しました。


詳しくは活動報告をご覧くださいませ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ