表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/111

第九十話 同志




竜胆勝という刑事に保護され、はや数週間。

特に変わり映えのない日々。

変わらず花に水を与える日々。

なんて平和なのだろう。




ヒナノからの連絡や、ストーリーの更新は相変わらずない。

椅子に座り、ふぅと息を吐いた。




「元気にやってるか?」




勝はラナの花屋に時折遊びに来るようになり、いつも様子を伺った。




「今日も奥さんにお花ですか?」




「あぁ、とびっきりかわいいの頼むよ」




「どうしよっかなぁ…

あ、ちょうどリンドウの花ありますよ」




勝さんの苗字と一緒!と、ラナは微笑んだ。




「いいじゃないか!

家の息子と娘もきっと喜ぶよ」




「……そうですね」





いいなぁ、家族って。

そう考えた矢先、勝のスマホが通知で揺れた。




「ごめんな、ちょっと急用が…

申し訳ないけど、警察署に届けてくれないか?

お代は置いてくから」




「大丈夫ですよ

営業後になっちゃうけど…」




20時を過ぎることになりそうだが平気か尋ねると、勝は申し訳なさそうに頷いた。




時刻は20時を回り、閉店作業を済ませ花束を抱えラナは警察署へと向かった。




「すみません、竜胆勝さんへお届けものです」




「伺っております」





警察署の受付の人に渡すと、ちょうど勝が戻ってきた。




「すまない、わざわざ届けてもらって」




「大丈夫ですよ!」




ラナは勝の隣にいるスーツ姿の女性を見て、綺麗で清潔感がある人だと思い見惚れていると、女性は名刺を差し出した。





「情報科の赤井アザミです」




「アザミ…素敵な名前ですね!

ラナです」




「ラナさん。

どうぞよろしくお願いします」




アザミはぺこりとお辞儀をした。

なんだか、話をすると刺々しいオーラも出ていると感じた。





「じゃあ私は帰りますね!」




「ラナちゃん、せっかくだからゆっくりしていきなさい

アザミちゃん、お茶淹れてあげて。

俺はコンビニで軽くなんか買ってくるから!」




「え、でも…」




「わかりました。

ラナさんこちらへ」




「え、あ…はい」




勝とアザミの勢いに負けて、思わず返事をしてしまった。




警察署の奥に入るだなんて初めてで、悪いことなどなにもしていないのに、妙にそわそわした。



客間のような無機質な部屋に案内され、目の前に緑茶を差し出された。




「ごめんなさいね、コーヒーか緑茶しかなくて。

夜だから緑茶にしたけど…」




「あ、大丈夫ですよ!」





ラナは出された緑茶を飲み、一息ついた。




「チョコレートあるけど、食べる?」




「あ、いえ…」




「飴もあるけど…」




「え、と…」




目の前に出されたお菓子にラナは少し困惑した。

なんでこんなにかまってくれるのだろうか。





「あ、ごめんなさいね。

その………妹と同じくらいの年齢だな…と」





「あぁ…そうなんですね」




「甘いものは好き?」




「あ、はい…っ」





「そう…一緒ね…」





「…………

なんでそんな悲しそうな顔なんですか?」





アザミは驚いた表情を浮かべ、俯いてしまった。




「え、あの…

気に触ること、いっちゃいましたか…?」




「違う。

私の問題よ。

ごめんなさいね」





もしかして…妹さんはもう、いないのだろうか。




だとしたら、この悲しそうな表情も納得がいく。

とはいえ、もし違っていたら失礼なため、遠慮なくチョコレートを頬張るのが正解かな…と口に含んだ。




「おいしい!」




「………」




アザミは優しそうな笑顔を浮かべた。




「ごめんなさい、あまり聞いてはいけないと思ったのだけれど…


なぜあなたは飛び降りを?」




「えっ」





「勝さんに聞いたね。

ごめんなさい、あなたは察して聞かないでいてくれたのに」




職業病ね…とアザミは卑下した。




「それは…」




「言いたく、ないわよね…

そしたら、私から話すのが筋。



もちろん私の話を聞いても、言いたくなかったら大丈夫だから」




アザミには2人妹がいたこと、海外に旅行に行ったっきり帰ってこないこと。





「下の妹に、あなたを重ねた」





「そうだったんですね…」




ラナもヒナノのことを語り、なんとなくアザミと境遇が似ているのかもしれない、と感じた。




「私…ヒナノをもっと止めればよかった」




「ラナちゃんは悪くない。

実際今増えてるんだよ、海外に出稼ぎ行って帰らない子は」




「そうなんですか…

なんでわざわざ、海外に?」




「1日で何千万稼げるってデマが流れてるの。

そんなわけないのに…」





「ヒナノも似たようなこと言ってました…」




「本当に今多くて…」




「どうしたら、止めれるんですか…?」




「それは…」




「私、もうヒナノみたいな子増やしたくない、です」




「女の子を騙して、斡旋するやつら私は許したくない」




「ラナちゃん…」




「それにアザミさんの妹さんだって、16だったんでしょ?

そんな女の子を…」




誰かの大切な人を踏み躙るような奴、のさばらせたくない。




16のとき、入院することしかできなかった。

もっといっぱい色んな経験を、この先の人生、家族との時間を奪うのは許せないと苛立ちを覚えた。




「アザミさんの妹さんや、ヒナノみたいになってしまう子を増やしたくない…」




そう言った瞬間、部屋の扉が開き勝が大量の袋を持って入ってきた。




「いやぁーごめんごめん、遅くなって!」




好きなの食べな!と勝がご飯をテーブルにたくさん並べていく。 




「あ、ありがとうございます…」



「いいっていいって」




————




「ありがとうございました!


アザミさん、勝さん、また」




「おやすみなさい」




「また花屋いくから!」





勝はラナとアザミを車に乗せわざわざラナの自宅まで送ってくれた。


勝はラナがオートロックを開けて入っていくのを見届け、車を発車させた。





「アザミちゃん」




「はい」




「ラナちゃん、どうかな」




「どう、とは」




「特殊部隊にだよ」




勝は真剣な表情を浮かべ、ボソリと言った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ