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第八十八話 縁



「ラナも投稿しなよ〜」




かわいいから絶対バズるよ?

とヒナノが自撮りをしながらラナに言った。




「や〜…

あんまりわからないからなぁ…」




ヒナノは有名キャバ嬢としてインフルエンサーとして、男性のみならず女性からの支持もあつかった。


ヒナノが投稿すると、瞬く間に賞賛のコメントがつき、ヒナノもいいね数やコメントを見て自信を保っているように見えた。




『18歳でこれは完成しすぎ』



『細すぎて憧れる』




などのコメントを見たラナは、ヒナノは細すぎるだろうと心配していた。

あまりにも細いのに、豊胸で大きな胸、ラナには少し異常に見えた。




「なんだかこわいよ…

ヒナノ、もっと食べなよ」




そう言い、ラナはまだ手をつけていなかったケーキを差し出すと、ヒナノはあからさまに嫌そうな表情を浮かべ、吐いた真似をした。




「そんなん、デブになれって言ってるもんじゃん!」




ここのところヒナノはやや怒りっぽいと感じていた。

きちんと栄養を摂っていないからでは…

3年間入院していたラナにとっては、ケーキなどごちそうだというのに、もったいない。




「食べた分動けばいいのよ」




「めんどくさーい…」




出会ったときは、こんな感じではなかったのに…と、少し切なくなった。




前はケーキだって半分こしていたし、お客様からいただいたご飯や果物も喜んで食べていたというのに、インフルエンサーになった途端、変わってしまった。



かと言って周りに怒鳴り散らしたり、無視をしたりいじめをしたりするわけでもないので、明確なヒナノの中の価値観だけが、変わってしまったのだろう。




当たり前のものに感謝できなくなるのであれば、やはりSNSなどやらなくてもいいや…と、ラナはケーキを口に運んだ。





ラナからすると、なぜ若い子がやたらスタイルやブランドものに執着するのかわからなかった。




もちろんラナもいいバッグ一つ欲しいな、これかわいいな、と思うことはあったが、シーズン毎に買い揃える、ブランドものを持っていない人を馬鹿にするという、若者のSNSに価値は見出せなかった。




それから数日が経ち、ヒナノはキャバクラに出勤しなくなった。




「最近ヒナノちゃん見かけないね」




「飛んだんじゃない?」




「なんかしばらく休むって連絡はあったみたいよー」




夜の業界では、入れ替わりが激しく誰がいなくなっても大して誰も騒ぐことはなかった。





ラナは、もしかして栄養失調などで倒れているのでは…と危惧した。

あんなに細かったのだ、部屋で倒れて助けを求めている可能性もある。




ラナはすぐにメッセージを何通か送り、返信を求めた。




しかし、返信どころか既読になることはなかった。



その反面、毎日絶えずSNSは更新されており、無事だということはわかったが、言いようのない怒りと寂しさを感じた。




「どうして、返信してくれないの…?」




友達だと思っていたのは、私だけなの?

ラナの目に涙が滲む。




「夜なんてそんなもんだよ。

だって別に、本名も知らないでしょ」




ラナの落ち込んだ姿を見て先輩が元気だしなーと声をかけてくれた。



たしかに、本名や生まれた場所、なんにも知らないが、一緒に過ごした楽しい時間は本物だったはずだ。




だって、こんなにたくさんのお店がある中で、今この時一緒に働いているのだ。



それは紛れもなく、縁だとラナは思っていた。




それから数ヶ月経っても、ヒナノは店に現れることはなかった。



ラナは店の寮から出て、花屋のシフトを増やしなんとか生活を送りライフスタイルを立て直す真っ只中にいた。



それでもヒナノを忘れた日は一日もなかった。




毎日更新されるストーリーを見るだけの日々。



ベッドに寝転がり、そろそろ寝るか…と目を瞑ると、ピロンと通知音が鳴った。



画面を確認するとヒナノからのメッセージだった。

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