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第八十六話 カミングアウト




「なにしてるの?」




「対話」




日向はバルコニーの手すりに肘をつき、夜空を見上げていた。





「パパとママと………太陽とソラ」





「太陽とソラ?」





なにそれ、とミヤコは首を傾げた。





「生まれるはずだった弟と飼ってた犬」





「弟…そう…」





日向の隣に立ち、ミヤコは静かに目を瞑った。




「誰と対話してる?」




「…妹」




「そっか」





妹は新しいものが好きで、スマホが新しく出たらその度に欲しがっていたな…と思い出した。





「妹に会いたい…」





「そうだね。

ミヤコちゃんのパパとママは、生きてるんだよね」




「………そうね。

お父さんとお母さんと、お姉ちゃんも…」





「元気だといいね」




「そうね…」




ミヤコは日向の顔を見つめた。

目を閉じ、少しだけ、ほんのわずかに口角を上げていた。

日向の耳に輝くピンクのピアスをつけていた。





「なにを話しているの?」




「んー…

僕にも友達ができたよって」




「あらそうなの」




「今隣にいるよって」




「あら…」




わたくしのことね、とミヤコはフフッと微笑んだ。




「拒否しないの?」




「する理由はもう、ないわ」




「そっか。

ミヤコちゃんといるとさ、落ち着くんだよね」




「…わたくしも、あんな感情剥き出しにしても引かない男、初めてよ」




「それがミヤコちゃんのいいとこでしょ」





心地よい風が頬を撫でる。

少し肌寒いが、そんなことは気にならなかった。




「まぁ、ラナが1番だけどね」




「言うと思った」




ミヤコはフフッと笑い、日向の横顔をいつまでも見つめていた。





———





「こかげ、ひなた…かぁ…」





前に滋賀で会ったピンクのロングウルフの男。

なぜ自分の名前を知っていたのだろうか、とラナは頭を悩ませていた。




——きっと、忘れてしまったんだろうな。





ラナはそうため息を吐いた。

高校生の頃に、ストレス性健忘症になり、孤児院での記憶はごっそりないのだ。





彼も、孤児院で育ったのだろうか?

だとしたら、申し訳ないなとラナは思った。





「おはよ」



「陽翔!

おはよう!」




ラナは陽翔の顔を見るなり、明るい気分になり、自然と笑みを浮かべた。




「陽翔、牛乳あげる!」



「ありがと」




陽翔は牛乳を受け取り、ストローを刺し飲み始めた。




「…なに?」




「あ、ううん、なんでもない」




「そう?」




「陽翔、ピアス開けた?」




「まだ」




「そっかぁ」




ピアスをあげたのは結構前だ。

いつになったらあげたピアスつけてくれるのだろう、とラナはヤキモキした。




「開けないの?」




「うん。

高校にいるうちはやっぱりよくないかなって」




「そっか…」




せっかくくれたのにごめん、と謝る陽翔に、ラナはそんな校則なんて気にしなくていいのに、と若干苛立ちを覚えた。




「反省文かかされたくないし。

ちゃんと保管してるよ」




「そっかぁ…」




私とずっといるみたいに思ってほしいからあげたのになぁ…とラナは落胆した。




陽翔がスマホを開き、ロック画面がラナの目に入った。


涼太、ゆうり、陽翔が高校の入学式のときに撮影された写真だった。




「…まだそれなんだ?」




「うん。

気に入ってるから」




もっと撮ればよかったな、と陽翔はつぶやいた。




「…私と撮ろうよ」




「ラナと?

いいよ」




陽翔はそう言い、少しラナに近づき、スマホを構え写真を撮った。




「それ送って!」




「いいよ」




「ロック画面にしていい?」



「いいよ」




そう言い、陽翔はスマホをいじり始めた。

あ、陽翔は変えないんだな…とラナは悲しい気持ちになった。




「陽翔、あのね、私…

記憶がないの」




「え…?」




いきなりのカミングアウトに陽翔はポカンとした表情を浮かべた。





陽翔が気になってくれた、とラナは心の中で歓喜した。




「あのね………」

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