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第七十九話 拡散力




「こうき…?」




陽翔はマスクとサングラスと帽子をつけて隠れるこうきに声をかけた。




「もうみんな来てるよ」




「心の準備させて…!」




「もう2時間経つよ」




「おいさっさと面見せろ」




「あ!」





陽翔の家に訪れたあおいがこうきのサングラスを奪いとる。

するとあおいの顔はみるみるうちに怒りに染まっていった。




「はぁー?

ふざけんな綺麗な目をしやがって…

マスクもよこせ!」




「や、やめて!」




「ほらマスクも外せ!」




「やめなさいよ!」




ラナがあおいとこうきの間に入り、仲裁をする。




「女の子に庇われた…もうだめだ…」




「プライドたっか…」




こうきは帽子を深く被り、膝を抱えてしゃがみ込んでしまった。




「今どきそんなこと言うなんて、私を馬鹿にしてるの?」




「そうじゃないよ…!

でも君みたいなかわいい女の子を守るのが、男の役目だろ…!」




「古い考えだな…」




さすがの価値観にあおいは「何歳?」と思わず聞いてしまう。




「私が守られるだけの女ってこと?」




「違う、そうじゃないけど…

女の子に、ヒーローをさせて世の中の男はどうなってるんだと…」




「頭かたいなぁ…」




「ならさ、なんであんなとこにいたんだ?」




涼太の質問に静まり返った。




「それは…僕が弱かったから…」




「大丈夫。

なにがあったか話して」




「…僕は…」





———





7歳の天才フェンシング少年と題された新聞に大々的に取り上げられ、ニュースにも出るほど持て囃された。




幼い頃からフェンシングを始め、剣の道を極めた。

しかし、見出しで注目されたために弊害が生じた。




「すごく顔が整っている少年」と紹介されることが多くなった。




本来フェンシングはまだまだマイナーな競技だと感じていたこうきはこれからも努力を重ね、もっとメジャーな競技にしていきたいと夢に見ていたため、インタビューされること自体は最初は苦ではなかった。



しかし、成長するにつれどんどんフェンシングのことではなく、容姿についてしか言及されなくなっていった。




「芍野さん、お疲れ様です!」




「あ、お疲れ様です…」




「マスクを取って顔を見せてください、笑顔でお願いします」




「は、はぁ…」




マスクを取り、ぎこちなく笑うと競技とは全く関係のない質問が飛び交った。




「好きな食べ物は?」




「休みの日はなにしているの?」




「恋人はいるの?」




「お父さん、僕はフェンシングを続けて意味があるのでしょうか…?」




「なにを馬鹿なことを。

そんな騒音は無視しなさい。

お前には才能がある。

それを伸ばさずしてどうする」




父は頑固だったが、決して間違いを許さない男だった。




男なら家庭を支えるのは当たり前。

困っている人を助けるのは当たり前。

人として間違えたことをしたならば、敷居を跨ぐことは許さない




そんな人だった。





そんな父を尊敬していた。




尊敬していたのに、弱かったせいで。




月日は流れ、フェンシングの強豪校に進学し、寮に入り生活を送った。





きゃあっと女子の黄色い悲鳴がやけに大きく聞こえた。




騒音、騒音は無視だ。




「マスク取って!」




「こっち向いて!」





その声を聞こえないフリをし、体育館をあとにした。




「こうき、お前なんか拡散されてるよ?」




「えっ?」




クラスメイトからスマホを奪いとり、画面を見ると




『イケメンフェンシング少年の居眠り風景』




などと書かれており、動画と一緒に拡散されていた。




『さすが天才、授業なんて聞かなくても余裕なんですね』




『顔面強すぎて草、この歳から整形してる?』



『昔の写真見る感じそれはないかと…』




そのコメントと一緒に昔インタビューを受けた記事の写真も貼られていた。




よく見ると居眠り風景だけではなく、寮で食事をする姿、部室での姿、色々載せられており全て拡散されており、寮の場所まで特定されていた。




「こ、こわい…なんで…!?」





「顔がいいって大変だなー」



クラスメイトはいかにも他人事というかのようにスマホを取り、去ってしまった。




「こわい…どうして…誰がこんな…」





自分がずっと監視されており、なおかつ逐一SNSにその姿がアップされていることに恐怖を抱き、震えが止まらなかった。




それからこうきは常に不織布のマスクを着けるようになった。

なるべく目立たないように。




「せっかくの美形なのにもったいない」




そう言われても騒音だと思い、友達もつくらず卒業まで過ごした。




大学に進学にしても変わらずマスクを常に着け、変わらない日々を過ごしていた。



孤独だった分、体を鍛え、フェンシングの技磨きにも力を入れ数々の大会で優勝を果たした。




「あ、こうきお前すごいな、なんかまた優勝したんだっけ」



「おめでとー」




「ありがとう」




声をかけてくれて素直に嬉しかった。

フェンシングを頑張った甲斐があったな、と感じた、その矢先。





「え、てかさ

なんのスポーツだったっけ?」




「え…」




「なんだったっけ、まーどうでもいっか!

とにかくおめでとう!」




「あぁ…」




試合が終わり、いつも通りの黄色い歓声を無視し、会場をあとにする。

人気のない場所で、こうきは高校時代から見ていなかったSNSを開いた。




『王子、マスクいっつも着けてるなマスク警察にびびってるのか』



『今日の試合もかっこよかった、王子だけマスクなしで試合してくれ』



『ぶっちゃけフェンシングやめてモデルとかなればいいのに』




「………」




膝を抱えて頭を埋める。


するとこうきの耳に拍手をする音が聞こえた。




「…?」




「素晴らしい競技でしたよ」




拍手をする男は見たこともないくらい綺麗で白くて、不気味だった。


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