第六十七話 殺す練習
日向は水中にて素早く動く一羽のペンギンに標準を定めた。
ドスっと鈍い音が鳴った。
一瞬でプールは血の海となる。
「かわいそうに。
今楽にしてあげるね」
痛みで先程よりはやく泳ぐペンギンに日向はもう一発矢を放った。
急所に当たったペンギンはゆっくりと底へと沈んでいった。
「やめなさいよ、そんな残酷なこと」
「ごめんね。
やってみたくて…」
ミヤコは後ろから声をかけた。
本当はホオジロサメにやりたかった、と日向はつけたす。
しかし、ホオジロサメなどこの水族館には存在しない。
「ジョーズ、好きだったんだよね。
あのシーンやりたくて」
「…なぜペンギンを」
「たくさんいるから、一羽いなくなっても大丈夫かな」
「…そう」
ミヤコがため息をついた。
「あなたあまりこういうことしないでしょう。
いきなりどうしちゃったのよ」
「殺しの練習。
僕、きちんと人を殺したことなかったから」
「誰を殺したいのよ」
「竜胆陽翔」
明日またニュースになっちゃうな、と日向はため息をついた。
「まあ仕方ないか。
次はイルカでも狙ってみようかな」
「…ほどほどにしなさいよ」
「ペンギンやっちゃったら、もうなにしても一緒だよ」
———
「理想の息子さんってなんだよ?
ちゃんと名前で呼べよ!」
涼太が声を張り上げると、館内に響き渡る。
ゆうりはそんな涼太を見て、ため息をついた。
「うるせぇ」
「ゆうり、どうしたんだよ」
「涼太の思ってる通りだ。
俺はいらねぇんだよ」
「いらない…?
涼太、どういうことだ」
「なに言ってんだよ!
いらないって思ってたら、俺も陽翔もここに来てないんだよ!」
「…で?」
「え…」
「お前らにそう思われてもな」
ゆうりは冷たい瞳をしていた。
頬杖をつき、目を伏せた。
「なんだよ、それ!
俺らはゆーりのこと…!」
涼太はゆうりの胸ぐらを掴んだ。
しかしその瞬間。
「ゆうりちゃんに触らないで」
涼太はいきなり後ろから腕で首を絞められ、驚いて手を離した。
「蜜樹、余計なことすんなよ」
陽翔は蜜樹を見て、仮面の男をボコボコにしていたことを思い出した。
「…涼太、あの女の人、強いよ」
「だろうな…」
「あ、あなたが日向ちゃんが言っていた妖怪ね」
「よ、妖怪っ?」
妖怪はお前だろ、と陽翔は思った。
「フィジカルおばけって仙ちゃんも言ってたなぁ…
あたしもそうだよ」
「はぁ…」
「ねぇ、変身してよ。
ゆうりちゃんは陽翔ちゃんと話したら?」
「…そうだな」
涼太は冷や汗をかいた。
この女、楽しげに話しているが、圧を感じる。
ごくりと喉を鳴らして、涼太は変身をした。
「じゃあ、涼太は蜜樹にまかせる」
「うん、ゆうりちゃん」
「待てよ、ゆーり!」
ゆうりを追いかけようしたが、蜜樹に阻まれる。
「うわ!?」
「よそ見しちゃダメよ、あぶない」
「涼太…!」
陽翔も変身しようしたが、ゆうりに手を掴まれた。
「別の場所に行こうぜ」
「…!」
「梅、ウミガメいる!」
「よかったですね、百合様。
スープにしても美味しいですよ」




