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第六十六話 理想の息子



ゆうりは通知が鳴り続ける画面をしばらく見つめた後、タップした。




「…涼太(りょうた)



『ゆーり?

今、なにしてる!?』




「なんの用だよ」




『いや、お前のお父さんってさ…

優しい人だったよな。


たまたま見かけちゃって…

ゆーりに酷いことを…言ってて」




「…もう、いい



今から会えるか。




陽翔(はると)も連れて来い」




『え?

陽翔も?』




「ああ。


場所はあとで送る」




ゆうりは通話を切り、思いっきり机を拳で叩いた。

涼太に、知られた。

父の実態を…。



『涼太くんがうちの息子だったら、よかったのに』




父の言葉を思い出し、ゆうりは歯を音が鳴るまで噛み締めた。




「出かけるのか」




「……はい」




百合にいきなり話しかけられ、ビクッと肩を震わせた。





「陽翔も来るのか」




「はい」




「それは面白そうですね。

幼馴染が集まるならいっそ…」




思い出の場所で対峙してはいかがですか?



と梅は満面の笑みで提案した。




「思い出の場所…?」



「最後に見ればいいじゃないですか。


イルカショー」




「…そうだな



父さんのことを知られた…

涼太に…涼太に…っ!!」




梅はそんなゆうりの姿を見て、くすっと微笑んだ。





「じゃあ行きましょうか。

水族館に」




———




「陽翔!」




「涼太…なにが…」




陽翔は涼太に水族館に呼び出されるとは思わず、きょとんとしていた。




「陽翔…、来たな」




百合は高台からオペラグラスを携え、アイスを咥えながら陽翔の姿を眺めた。




———



ゆうりはゆらゆら動く魚をぼんやり見つめた。




「悩んでいるのか」




「別に」




仮面の男は後ろからゆうりに声をかけた。

ゆうりは振り返ることなく淡々と答えた。




「俺はもう止まれない」




「…」




「話しかけんな、いい歳こいて仮面つけてる奴と話すことねぇし」




「…八つ当たりは未熟者がすることだ。

貴殿も男なら、もう少し精進すべきだ」





「…あぁ」



ゆうりはそう一言応え、ゆっくりと歩み始めた。





———



「勝手に入っていいの」



「中にゆーりがいるみたいだけど…」





陽翔と涼太はさすがに深夜の水族館に忍び込むことを躊躇った。




「おい」




「…!

ゆうり」





「ゆーり、俺…」




涼太の言葉を遮るかのように、ゆうりは片手でストップをかけた。





「知りてぇなら、全部話してやるよ。

理想の息子さん」




「り、理想の息子…?

なに言って」




「黙れ」




「涼太、ゆうり…?

なんの話だ」




「中で話してやるよ」




ゆうりは、踵を返し水族館の入り口へと向かった。

あわてて追いかけると、警備員が眠らされて横たわっていた。




「…これ、ゆうりがやったの」




「は、まさか。

梅だよ」




「めい…?」




「白衣着てる奴」




「ああ…」




「まぁ、座れよ。

俺とずっと話したかったんだろ」




ゆうりは水族館内のカフェテリアの椅子に座る。





「座れよ。

理想の息子さんに、ヒーローさん」




ゆうりは指を差し、冷たい瞳で陽翔と涼太を見つめた。

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