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第六十三話 しつこい



「俺たちもう会わない方がいいと思う」




その言葉を聞いた時、意識が遠のいた気がした。




「ど、どうして?」




「……」




はなが質問してもゆうりは答えなかった。





「せめて、理由教えてよ…」




「…そうだな…」




ゆうりは少し考えた後、口を開いた。




「…勉強に専念したいんだ」




「え、それだけ?」




それだけなわけがない。

絶対に他にもっとなにかあるはずだ。

納得できない。

絶対理由は勉強なんかではない、そう直感的に思った。



「なにか、悩んでるの…?」




「別に…」




「そんなこと言うならなんで今日一緒にいてくれたの…?」




「別に、やってみたかっただけだよ、学校サボって遊ぶってのを」




「そんなの…


そんなのお兄ちゃんとしたらいいじゃん!


幼馴染なんだから!」




その言葉を聞き、ゆうりは驚いた表情を浮かべた。




「お前も俺の幼馴染だろ?」





その言葉を聞き、無性に悲しくなった。




ポロポロ涙を流すはなに、ゆうりはハンカチを差し出した。

はなは無言で受け取り、涙を拭う。



「洗って返す…」




「もう会えないっつっただろ」




その言葉を聞き、余計に涙が溢れた。




「ほら、家まで送るから…」



「いい」




「いや、最近物騒だから…」




「いいってば」




「いいから送るっつってるだろ!

黙って送られてろ!」




えぇ…と、はなは困惑した。

会わないと言われた後に優しくされたり、意味がわからない。





なんで一緒に帰っているんだろう、ゆうりは本当になにを考えているのだろうか。




「…

知らない奴に声かけられてもお前はついてくなよ」




「え…う、うん…」




「いいか、相手が女でもだからな」




「え…?

女の人が、私を誘拐なんてしないでしょ」




「いいから、絶対知らねぇやつにはついてくなよ」




「ねぇ、ゆうりくん、本当にもう会えないの?」



「…あぁ」




少し、乾いていた目からまた涙が溢れる。


もう家はすぐそこだ。

着いたら、本当にもう会えない気がした。

はなはあまりの悲しさに思わずしゃがみこんだ。





「おい、立てよ」




「わかってるけど…悲しくて…」



はなが鼻をすすると、キキーっと耳障りな自転車のブレーキ音が響き、はなの後ろでガシャン!と派手に転ぶ音が聞こえた。




陽翔(はると)…」




「え、お兄ちゃん!?」




振り向くと陽翔が痛そうに転んでいた。

なにやってんだ、と一瞬で涙が引っ込んだ。




「いたい」




「なにやってんのお兄ちゃん」




「水族館いたから行ってきた」




「なんで知ってんの?」




「いちじょ…

なんでもない」




位置情報って言った?今。




「じゃあな、はな」




「え、ゆうりくん…待って…!」




「ゆうりと行ってたの」




陽翔を無視して、ゆうりの腕を掴む。




「もう会えないって言ったら会えないんだよ。

兄妹揃って、しつこいんだよ」





「ごめん…」




「おい待てよゆうり」





今度は陽翔が、ゆうりの腕をつかんだ。




「はなを泣かせるなよ」




「…勝手に泣いたんだろ?」




「お前ふざけるなよ」




思わず陽翔はゆうりを殴ろうとしたが、ゆうりの瞳に、手を止めた。




「ゆうり、本心じゃないんだろ」



「いいから放せよ」




「やだ。

だってゆうり泣きそうだもん」




「だから放せっつってんだよ」




「…やっぱりゆうりくん、悩んでるの…?」




「はな…」




陽翔がはなを見て、力を緩める。

ゆうりは陽翔の手を払い、くるりと背を向けた。




「俺の悩みはな、お前らがしつこいってことなんだよ」



「え…」




「じゃあな」




「ゆうりくん…」




陽翔は自転車を起き上がらせ、ため息をついた。




「はな、大丈夫」




「お兄ちゃん」




「ゆうりはなんにも本心で言ってないから」




「…どうしたら、本当のこと話してくれるかな…」




「それは俺がなんとかする」




「…どうやって?」




「なんとかする」




多分なんにも考えてないんだろうな、とはなは思った。

その自信はどこからくるのか不思議で仕方なかった。




「じゃあお兄ちゃんなんとかできなかったら、またドーナツ10個買ってね」




「え、わ、わかった」



壊れた自転車を引きながら陽翔は苦笑いを浮かべた。


このあと、学校をサボって遊びに行ったことと、何回自転車を壊すのかと兄妹揃ってめちゃくちゃ叱られた。

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