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第六話 三姉妹

「選ばれなかった?」



「………彼女は妹が2人いたんだ。

巷では、美人3姉妹と呼ばれていたよ。

…2人は中国に旅行に行ったっきり、帰ってこなかったそうだ」



アザミは自ら中国へと赴き、その足で妹2人の手がかりを探し、ようやく見つけたのが、百合という女だった。



「あの女は悪魔だ。

若く美しい女の子を好む」



「だからはなを…」



「陽翔。百合という女を止めるのが、この部隊の役目だ。

…アザミちゃんの気持ちもわかってやってくれ」



「当たり前に」



陽翔は拳を握り、踵を返した。



「牛乳を買いに行くんじゃなかったのか?」



「正座してからにする」




———


「はぁーあ、竜胆陽翔の弱点なんかないものかねぇ」


仙はここ数日、陽翔を張っていたが、

牛乳を大量に買い込んでいることくらいしか特に情報を得られなかった。


「どんだけ牛乳好きなんだよ!?

……赤ちゃんか?」



「……牛乳。

牛乳か」



仙はククッと腹黒い笑みを浮かべた。




———




「陽翔ー、郵便受け見てきて」



「あい」



陽翔が郵便受けを開けると、一枚のポスターが目に入った。



「……酪農体験?

搾りたての牛乳飲み放題!?」




———




「「で?」」



「「なんで、私(俺)まで牧場に来なきゃいけないわけ??」」



「おお、初対面なのにはもってる」



ゆうりとアザミは顔に青筋を浮かべた。



「私

はゆうりくんと来れて嬉しいけど…」



「はな…風邪よくなったんだな」



「ゆ、ゆうりくんのおかげで…」



「我々はなにを見せつけられてるんでしょう、アザミさん」



「さぁね」



「涼太が試合に向けて来られなかったんだよ、ゆうりもアザミさんもいっつもカリカリしてるから、牛乳飲んで落ち着こうよ」



「お前なぁ、緊急だって言うからバイト変わってもらったのに、牧場かよ」



「ほら、あそこのカフェで飲み放題だって。

行こう、3人とも」



「「ハァ…」」



「す、すみません、お兄ちゃんが…」



アザミは、はなの顔を見てふわりと優しく微笑んだ。



「優しいお兄ちゃんね。

ズレてるけど」



「えへへ…はい」



「…ところで、あなたは誰なんです」



ゆうりは不思議そうにアザミの顔を覗きこみ、アザミは咳払いをひとつした。




「ああ、赤井アザミです。

警察情報通信部隊に勤めてます」



「…警察?陽翔のお父さんの繋がりですか」



「ええ」



「休みの日に大変ですね。お疲れ様です」



「君もね」




「搾りたての牛乳…

格別だ、このまろやかさ」



「私ソフトクリームにしよ!」



「俺カフェオレ」



「私はいちごみるくにするわ」



「…邪道だ」



「「え?」」



「だから!!牛乳になにか混ぜるだなんて、邪道だって言ったんだ!!!!」



「お兄ちゃん…」



「忘れてた…まだそんなガキみてぇなこと言ってたのか」



陽翔はムッと顔を顰めた。



「この良さがわからないとは」



陽翔はこの熱き情熱を理解されず、不貞腐れた。


店内に飾られた、今話題のアイドルのあおいのサインや、彩り豊かなポスターが目に入る。 




「この良さがわからないとは」



陽翔はこの熱き情熱を理解されず、不貞腐れた。


店内に飾られた、今話題のアイドルのあおいのサインや、彩り豊かなポスターが目に入る。




「いや、私は別に」



「いいからいいから」



「ちょっとお兄ちゃん!」



いきなりゆうりくんと2人きりにしないでよ!とはなは心の中で叫んだ。

ゆうりは陽翔にズルズルと引きずられていくアザミを見てきょとんとしていた。



ベンチに腰掛け、陽翔はモルモットをひと撫でした。

エサを食べるうさぎをアザミは優しい目で見つめる。



「…アザミさん。

聞いたよ、親父から」



「…………そうか」



「俺は、はなや他の人たちを守る。

それだけ。

だから…………色々指導してください」




「……………。

??」



「?どうし…」



「シッ!さっきからおかしいと思っていたけれど…やたら人がいなくないか?」



「え」



「静かすぎる、日曜なのに」



「空いてるだけじゃ」



「いいや、それにしてもおかしい。

それに…飼育員の影も見えない」



「!」



「あーあ、勘のいい姉ちゃん連れてきやがってよぉ」



「!おじさん」



「水沼仙ね。

姉ちゃんもよろしく」



アザミの顔が険しくなる。



「おじさん、ここの従業員だったのか」



「んなわけあるか!

ここの従業員を脅して、お前ら以外の客は入場NGにしてたってわけ!

まさか、あんなポスター1枚で本当に来るとはねぇ」


「アザミさん、こいつ…」



「わかってる」



アザミは顔に青筋を浮かべ、歯軋りをした。



「おぉ、こわ。

美人が台無しだよ?

ま、嫌いじゃねーけど」




「赤いの。変身できるか」



「あい」



————



「2人とも遅ぇな」



「そうだね…」



「俺見てくるよ、はなはもう少しゆっくりしてな」



「わかった」



ゆうりはそうはなに告げ、店内をあとにした。



—————


陽翔はデバイスで変身をし、身構える。



「んーそれにしても、姉ちゃん美人だねぇ。

もーちょっと若かったら百合様のとこにお連れしたんだけど」



アザミはその言葉を聞き、眉がピクリと動いた。



「だまれ」



「姉ちゃんさー、妹とかいないわけ?

そしたら、献上できるのになー」



「やっぱさぁ、女は若くて愛嬌がなくっちゃなぁ。

あ、でも、姉ちゃんもまだ充分若いし、仙さんは好きだよ」



アザミの手は震えている。



「その顔見るにさ、なんかつらいことあったんじゃないの?

いいよ、仙さんが癒してあげる」



「だまれ」



今度は陽翔が仙に、そう告げた。



「まーお前みたいなガキにはわからないよな。

はぁー妹とかいたら、仙さんと百合様で山分けにできたのによ。

役立たねーな」



その言葉を聞き、陽翔は勢いよく仙の顔を殴った。



「は………今俺の………俺の美しい顔を殴った………?」




仙は初めこそ、なにが起こったかわからない様子だったが、状況を理解したのか、今まで見たことがない怒りの表情を浮かべた。



「よくも………、よくも、美しい俺の顔を…………!」



仙は陽翔の首を思い切り掴み馬乗りになる。




「ぐ…っ!?」



「よくも…調子に乗りやがったな、ガキ…!」



アザミは陽翔を助けなければと思い、消化器を取り出した。

仙の背後に回り、噴射する。


すると、陽翔から手を離し、ゆっくりとアザミの方を振り返った。




「まずはお前からにするか…」



「粉まみれにしやがって………」



仙はアザミの消化器を奪い、思い切りアザミの頭を殴った。



視界が回り、思わず膝をついてしまう。

頭からはどろりと血液が流れた。



首を絞められ、抵抗しようとするが、力が入らない。

アザミはやっとの思いで口を開いた。



「かえ、せ…」



「あ?」



「妹を………かえせ………っ

妹を………よくも………」




「………はーん、なるほど。

お前の妹はもう百合様に食われちまったのか。

ご愁傷様、二度と会えませーん」



アザミはその言葉を聞き、涙を流す。



『お姉ちゃん、新しいスマホほしいー、お下がりやだよー』



『なーにわがまま言ってんのよ、卒業旅行連れてくんだから我慢しなさいよ』



『楽しんで来なね』



あの日の会話が忘れられない。



新しいスマホくらい買ってあげればよかった…だから私はデバイス型にしたんだろうな。



「いい加減にしろ」



「あぁ?」



陽翔は消化器を仙の顔に強く投げた。



「お返しだよ」



「てめぇ…」



「はやく病院に行かないと跡残るよ」



「くそ…

次は絶対にお前を消してやるからな。

震えて眠れ」



「二度と来るな」



「陽翔…」



「アザミさん、止血しないと」



「いい。自分でできる

陽翔」



「?」



「ありがとう」



「どういたしまして」




———


「なんだよ、あれ…」



ゆうりは陽翔の姿を見て驚きが隠せなかった。



「本当に変身して…ヒーロー…!?」


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