第五十三話 意外
「ヒーローの素質ってなんだろ」
陽翔はテスト中ふと疑問が浮かんだ。
アザミや親父はなんであんなに正義感があるのに、なれなかったんだろう。
ゆうりは、なぜヒーローになれなかったのだろうか、とテストの空白を埋めながら、思った。
「(答えがあればいいのに)」
数学とは違い、正解などあるはずもなく、終了を告げるチャイムが鳴り響いた。
ならば、なぜ自分や涼太、あおいやラナはヒーローになれたのだろうか。
—あの時、自分は確かはなを守りたくて、あの連中のやってることが気に食わなかったはず。
でもそれは、アザミと親父も一緒だと思うが。
やることは変わらない。
自分の正義感を信じることにした。
自分は決して親父みたいにはなれない、あんな熱血にはなれないが、それでもこの正義感さえあれば大丈夫だと思った。
「追試だ、なんだ竜胆この点数は!!」
「あい…」
追試を受けるため、放課後に指定された教室に行くと、ゆうりがいた。
「…?」
陽翔は目を擦り、教室を確認する。
「合ってる…え…」
「陽翔、なにやってんの?」
「涼太。
涼太も追試か」
「うん。
入らないのか?」
「え…教室合ってる?
よね」
「合ってる」
「え?
あれってゆうり」
「ゆうりだな」
「「なんでいんの!?」」
「いちゃ悪いか?」
「ゆうりが…?」
「追試…?」
陽翔と涼太はアハハと声をあげて笑った。
「今回って相当難しいテストだったんだなぁ〜」
「俺たちの勉強不足じゃなかったんだな〜」
「現実逃避すんな」
「「あはは…は…」」
ゆうりの言葉に一気に現実は厳しいんだと陽翔と涼太はずーんと暗くなった。
「ゆーり…珍しいな」
「なんで追試…?」
「受けてねぇから今回。
お前ら馬鹿と一緒にすんな」
「受けてない?
なんで」
「…」
「ゆうり。
ゆうりってば」
「…」
「おーい。
ゆうり?
ゆうりさん」
陽翔はしつこくゆうりに話しかけるが、ゆうりは参考書から目を離さなかった。
「ゆーり?
陽翔呼んでるぞ」
「……
ゆうりのアホ!
馬鹿!」
「……」
「ええ」
なお無視され、陽翔はしゅんとする。
「ばーかばーか、ゆうりのばーか」
「うるせぇな!」
ゆうりは陽翔の頭を辞書の角で叩いた。
「いってぇ」
「ゆーり、叩いちゃダメだろ!」
「お前らは勉強をしろよ!」
「涼太、DVされた」
「痛かったな〜」
「竜胆、若松なに騒いでんだ!」
教室に入ってきた先生に怒鳴られ、涼太はなんで俺まで…と、項垂れた。
———
追試が終了し、ゆうりは陽翔と涼太に目もくれずさっさと教室を出た。
「ゆーり、久々に一緒に帰ろうぜ」
「嫌だ」
「ゆうり、はなが会いたがってたよ」
「だからなんだよ」
「いやだからたまにはまた一緒に」
「俺はもうお前らと関わりたくねぇんだよ、はなのことなんか知らねぇよ」
「は?」
「いいじゃん、久々に会ってやれよはなちゃんに」
「俺はもうはなどころかお前ら…特に涼太とは関わりたくねぇ」
「え?
なんで…」
「嫌いだから。
じゃあな」
ゆうりは2人の顔を見ることなく、背を向けた。
「俺は嫌いにならないけどね」
陽翔はゆうりの背中に向かってそう叫んだ。
わずかにゆうりの肩が揺れた気がするが、振り向かず行ってしまった。
「涼太もそうでしょ」
「もちろん、嫌いになれないよな」
「……竜胆、若松、なんだ?
追試でこの点数は」
「「げっ」」
教師に肩を掴まれ、陽翔と涼太は青ざめた。




