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第五十話 模倣の末路




「すっからかんです」




あとにも残りません。



そうミヤコは梅に告げた。




「ありがとうございます」




「仕事ですから」




ミヤコは梅に褒められ、ぽっと頬が色づいた。




「なぜ彼はあんなことしたんでしょうか?」




「なにかを生み出したかったんですよ」




梅の言葉に、ミヤコは首を傾げた。




「…というと…?」




「いいですか?

ミヤコさん」





梅は髪を解かしながら、淡々と語った。




「彼は0からなにかを生む力はなかったんです。



そんな彼が「偶然」にも百合様に傾倒してしまった。



しかし、彼は私たちのことをなにも知らなかった」




くるくると天球儀を回しながら、梅は鼻で笑った。




「伝統と歴史を軽んじる者は流行はつくれません。



模倣するのはどうぞご勝手に。

しかし、リスペクトがないものはすぐに消える。



0から産む力がないのに、尊敬を忘れてしまえばなにも爪痕が残らない。

それが模倣する者の末路です。」





「さっきミヤコさん、すっからかんと言ったでしょう。




元々そうなんですよ」




「………」




「さぁ、雑談はここまでにして、これから食事にしましょう


ミヤコさんもいかがですか?」




「わたくしは、結構です」




「そうですか」



梅はミヤコの言葉などちっとも残念そうにする素振りは見せなかった。

穏やかな表情を浮かべ、るんるんと鼻歌まで歌っている。

食事…今日はどんな女の子が、食されるのだろう。




「私、タンが大好物で」



「知ってます」



「そうですっけ?」




家に帰して!



そう泣き喚く少女に、ミヤコは


貴方はもう助からない。



と、昔を思い出し目を逸らした。




「大丈夫!


麻酔はかけます」




ミヤコは耳を塞ぎ、部屋をあとにした。




「ミヤコちゃん」




蜜樹に声をかけられ、ミヤコは舌打ちをした。

この女は梅のお気に入りのくせに、全く梅になびかない。


それが気に食わなかった。




「不機嫌なの?」




「黙りなさいビッチ」




そう悪態をつくと、蜜樹は僅かに顔を顰めた。



隣にいる暗い紫色の美少年が、



「なんだお前?」



と、睨んでくる。




「貴方こそなに?」




小さいわね、と言うと、つり眉はますます吊り上がり、不機嫌そうにミヤコを見つめた。




「てめぇ、八つ当たりしてくんなよ」




「ふん。ガキは黙ってなさいよ」




「うるせぇ、ババア」




「なんですって…」




「それ以上言ったら、あなたを解剖して売り飛ばすよ。



あなたみたいなのは、欲しがる変態多いわよ」




「その辺にしたら?」




日向がメスを持つミヤコの手を出して優しく掴み、ポンポンと肩を叩く。




「この子はゆうりくんだよ、ミヤコちゃん」




「…そう」




だからなんだ。

名前など興味ない、とミヤコは鼻を鳴らした。




「こいつが急に蜜樹をビッチ呼ばわりしたんだよ」




俺らは被害者だ、とゆうりは静かに言った。




「いいよ、ゆうりちゃん」




ゆうりちゃんは優しいね、と蜜樹はゆうりをぎゅっと抱きしめた。

ゆうりは顔を赤くし、蜜樹を引き離そうとする。




ミヤコはそれを見てますます、自分の中の嫌悪が強くなったような気がした。




踵を返し、ミヤコはその場を去る。



「わたくしは、認められたい…」




梅に認められたい、本当のわたくしを。



「百合…」




憎い憎い憎い。

名前を呼ぶのも穢らわしい。




「梅様の心をもらわないと、わりにあわないわ…」




人から全てを奪っていく女。

梅の心だけでも、寄越せ。



ミヤコはガリガリと爪を噛みながら、片手でパソコンを打つ。






梅は「物語」さえ面白くなれば、身内がどうなろうと構わない。



そう、死んでもおもしろければいいのだ。



そういう人だと、ミヤコはここ数年で嫌というほど思い知った。





「どうしたら、好きになってくれるの…」




どうしたら彼が気に入ってくれるか、彼が楽しんでくれるか、ミヤコは一晩中考えたが、答えは出なかった。

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