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第五話 裏側

「よくおめおめと帰ってこられたな。

貴殿のやり方では、いささか無謀に見える」



豪華絢爛な広間で真っ黒な装いにフルフェイスの鉄仮面の男が、仙をなじった。




「1番に、っていつも言ってたのにね、1番失敗の意味だったんだね」



「あたしたちの仕事、増やさないでよね」



「はいはいはいはい、きっこえませーん」



「………雑談は済んだか?」



「「はっ」」



百合の一言で、その場にいた者たちが床へ跪く。




「…水沼。

少年を排除するのではなかったのか」



「…すみません、予想外のことで」




「だとしても。対象の少年は始末できておらぬではないか。


どうするつもりで?」



水沼は百合の冷たい瞳を見続けることはできず、床へと目を伏せた。




「引き続きおまかせを!

必ずや、絶対に…あのむかつく陽翔とかいうガキともう1人のフィジカルおばけを、始末します」




「次に、もし、ヒーローを誕生させた場合…どうなるかわかっておるか?」



「はっ!」




もし、次にヒーローを誕生させてしまったら、水沼はどうなってしまうのだろう。


その場にいた誰もが、そう思っていた。




—————



「ミルク、ただいま」



「キャンキャン!」



玄関を開けると元気にお出迎えしてくれた愛犬のミルク。

ミルクを抱っこし、リビングのソファに腰をかける。




「……結局気づいてたの、ゆうりだけだった」



お互い結局脅し合い、今回は手打ちになった。




「よかった。明日からまた普通に通える」



ふぅ、と一息つき、ミルクをなでる。



そういえば、親父はあとデバイスが2つあると言っていた。

もう1つはゆうりだとして、(勝手に決めるな!という声が聞こえたような気がした)

あともう一つはどうしよう。




「というか、このデバイスについてなんにも知らないな」



その晩、勝から電話がかかってきた。




『陽翔、すまんな電話で。



次の休みに、涼太くんを連れてきてくれないか』



「いいけど。なんで」



『お前と涼太くんに紹介したい人がいる。

お前たちの今後のためになる人だ。

絶対に来るように』




「…わかった」



そう言い、通話を切り、陽翔は伸びをした。



窓の外から、陽翔を睨みつける、水沼に気づかずに。



————-


警察庁特別部隊本部




「赤井アザミです」


その声には抑揚がなかった。

陽翔は一瞬、背筋を正し、

涼太は無意識に拳を握り直す。



やけに冷淡な女性だな、と二人は同時に思った。



普段情報通信部門にいるらしい彼女も今は同じ特殊部隊のメンバーらしい。



「まったくなんで私がこんなことを。

勝さんがやればいいじゃないですか」



「そう言わずに。


いいか、2人とも。


あのデバイスを作ったのが、アザミちゃんだ」



デバイスを作った…!?

どうやればあの不思議な構造のものを開発できるのだろうか。



「いいか、お前たち。

お前たちには、判断力、力をコントロールする力、戦い方などなんにも足りてない。



そこでだ。

彼女がお前たち2人の教育してもらう」



「「教育…!?」」



陽翔と涼太の声が重なる。

その様子を見て、アザミは鬱陶しそうに顔を顰めた。



「彼女は厳しいぞ。

しっかりついてくように」



「うす」



「あい」



涼太と陽翔の覇気のない返事を見て、勝はほんとに大丈夫か?と眉を顰めた。



「………不安だな」



————



「とりあえず変身してみせろ」


そう言われ、2人は言われるがまま変身した。



次の瞬間だった。



アザミはつかつかと陽翔に近づき、

ためらいもなく――パンッ、と頬を叩いた。


「!?」


視界が一瞬揺れる。


「……っ!」


涼太が反射的に一歩前へ出る。



「私が敵のスパイだったら、どうする」



陽翔はその言葉を聞き、ぐっと拳を握った。



「緑の方。お前は力加減がわからないんだったな」



「あ、はい…っ!」



「なら、お前はこれだな」





そう言い、2人を真っ白なだだっ広い部屋へと連れてゆき、

壁も天井も境目がわからないその空間を一瞥すると、

アザミは何も言わずオペレーションルームへと移動した。



「赤いの。

緑にボールを投げろ」



「緑。

まずは、思い切りそれを打て」



「え、思い切り!?」



「久々に投げるけど」



「いいから。

とっととやれ」



「だ、だけど……!」



「遠慮するな。

お前の最大出力を知るためだ」



「……そういうことなら」



陽翔がボールを投げる。


次の瞬間、涼太の瞳が光った。



乾いた音が響き、

バットは正確にボールを捉える。


打ち出されたボールは壁にめり込み、

そのまま行方をくらました。



唖然とする陽翔に、

涼太は困ったように苦笑いを浮かべた。



「今のが最大出力か。

大したこともないな」



一拍置いて、アザミは続けた。



「――制御できていない時点で、失格だ」



「緑の。

今日は一日中卵を割れ」



「た、卵!?」



「そうだ。握りつぶすなよ。

片手ずつで綺麗に割るんだ」



「片手で!?やったことないっすけど」



「いいからやれぇぇぇ!!」



「は、は、はいぃぃぃ!!」



——数分後。



「……っ」



卵は、また粉々になっていた。



卵が何度目かで潰れたのを見て、

陽翔は小さく息をのんだ。



「力抜けないんだな」



卵を握り潰すだなんて、どれだけの力を有しているんだ。



アザミは一切こちらを見ずに言った。



「そういうことだ。


……壊すのは簡単だ。

守る方が、何倍も難しい」




「赤いの」



「あい」



「お前は今日はなにもするな。

正座でもしとけ」



「え…」



「緑のを見張っとけ」



「えぇ…」



そう言い、アザミは2人に目を合わせることなくオペレーションルームをあとにした。




「なぜ、私が……」



ブツブツと文句を垂れ流しながら、廊下を歩いていると、勝と鉢合わせた。



「お疲れ様、アザミちゃん。

どうだ、2人は」



「まだまだです。

……私なら、もっと早く結果を出せる」



「アザミちゃん」



「……なぜ、あんな判断力も覚悟も足りない子が、

“ヒーロー”に選ばれたのか、理解できません」



お疲れ様です。とアザミは一礼し、その場を去った。




「親父」



「陽翔!?お前トレーニングはどうした」



「なんにもするなって言われたから牛乳を買いに」



「…………」



確かにこれは頭が痛くなるのも無理はないかもしれない。



「親父。なんであの人あんなカリカリしてるの」



「…彼女は同じなんだ」



「一緒?」



「そう。





俺と同じく


…デバイスに選ばれなかった者だ」




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― 新着の感想 ―
初見の人はまず2話まで読んで欲しい。 ハマる人はほんとにハマると思います…! 更新楽しみにしてます( ᵕᴗᵕ )✩⡱
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