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第四十九話 木陰日向




「あの男の人どうなったんだろ?」



「…」



ラナの問いに陽翔は黙った。


陽翔は今回外された理由はわからなかった。




「…」




包帯で巻かれたラナの手をそっと握る。




「陽翔…?」




「ラナ…」



陽翔はラナの目をじっと見つめた。

その眼差しにラナは次第に顔が赤くなっていくのがわかった。

ラナの髪が風に揺れ、陽翔はラナがシルバーのピアスをつけていることに気がついた。




「…ピアス、開けてたんだ」




「え?あ、うん」




「いいな、ピアス」




いつか俺も開けたいな、という陽翔に、ラナは自身のピアスを外し、差し出した。




「あげる!

新しいの欲しかったし」



「え、でも」




「お守りにして」




私だと思って、という言葉は気恥ずかしくて言い出せなかった。




「ありがとう」




そう陽翔は黙ってピアスを受け取り、じっと眺めた。



「そろそろ帰ろ。

傷に響くでしょ」




「え、」




ラナはまだ帰りたくない、そう思った。



「どうしたの。

痛むの」




「ううん、その、まだ一緒に遊びたいなって」




「また今度にしよ

怪我が治ったら、またみんなで」




その言葉を聞き、ラナは

2人じゃ、ダメ?

と聞きそうになった。




2人だと嫌なのかな。

私のこと、女の子として見てくれないのかな。



いつもみんなで行きたがる陽翔。

陽翔の横顔を見つめると、段々悲しくなってきた。




「ねぇ」




後ろから声をかけられ、陽翔とラナはバッと振り向く。




「なんでそんな悲しい顔してるの、ラナ」




ピンクのロングウルフの男はラナの顔をじっと見つめた後、陽翔を睨みつけた。




「お前がラナを傷つけたんだね?」




「え、そんなこと」




「ラナ、ダメだよ

そんな人と話したら」




「………貴方、誰?」




その言葉を聞き、日向は少し目を丸くし、優しくラナに微笑む。




「僕は日向。

木陰日向」




「こかげひなた…?」




「じゃあね、ラナ」




「おい…!



ラナ、知り合い?」




「こかげ、ひなた…」




ピンクのロングウルフの男は名前だけ名乗り、さっさと行ってしまった。


陽翔はラナに話しかけるが、上の空で肩を揺らしても、これといった反応はなかった。




「なんで?」



近くで見守っていたミヤコが日向に声をかける。




「なんで、名前だけ名乗って帰ってきたの?」




「ラナはね、ストレス性の健忘症だったんだ」




「健忘症…?」



「だから僕のこと全部忘れちゃった。

それを忘れてたよ」



「は、忘れて…?」



「一気に情報を出したらフラッシュバックする可能性がある。


そしたらラナが苦しむでしょ?」




「あんた…」




「そんなことより」




日向は壁を思い切り殴った。

殴った手は一瞬で真っ赤に腫れ上がったが、日向は一切気にしていないようだった。




「あの男、ラナを傷つけた」



「…わたくしは絶対にいや



忘れられるなんて」




ミヤコはそう呟き、陽翔への憎悪に満ちた日向の手を取り、連れて帰ることしか、できなかった。

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