第四十七話 美しいですね
「そんなことはありません」
白衣の男———
梅はにこっと笑みを浮かべた。
「女の子にナイフ振り下ろしちゃったの?」
蜜樹は可哀想なものを見る目で男を睨んだ。
「!ゆうり」
「お前は本当巻き込まれ体質だな」
「あ、あぁぁ…」
男はこんな間近で美しい憧れの人たちを見て、涙を浮かべた。
梅はハンカチを手に取り、口元を抑えた。
ゆうりのゴミを見るような冷たい視線さえ、男は興奮した。
「陽翔くんを張っていて正解でしたね」
にこりと、陽翔に恍惚とした表情を浮かべる梅に男は目を見開いた。
———なぜ、そんな低脳に、恋をするかのような表情を?
あなたは、美しい容姿の者しか目にいれないのでは?
「ゆうり、俺のこと見張ってたの」
「幼馴染を見張るなんて思わなかったよ」
———-幼馴染?
こんなに美しい少年と低脳が?
「なんで」
「え?」
「なんで、その低脳に、優しくするんです…?」
「……?好きだからですよ」
「な、なぜ?」
「美しいからです」
どこが?
だって、美しいものしか食べない人たちが、こんな少年を…
どうして
「どうして、そんな低脳で醜い少年を!?
あなたたちは美しい容姿の者しか、食べないでしょ、目に入れないでしょ!?」
「陽翔ちゃんかわいい顔なのにね」
最低、と蜜樹は男から距離を取った。
「だって、美しい容姿の少女たちを食べてたじゃないか!!?
だから、醜いものは目に入らないように、なんでわかってくれない…!?」
「あなたは美しいですね」
「えっ?」
「さぁ、どうぞ」
梅はミヤコが運転席に座る車を指差した。
男はそう言われ、誘われるかのように車に乗り込む。
「では、陽翔くんと女優さん
また会いましょう」
「じゃあな」
「え、あ、待て!」
陽翔はラナの手を見て、深追いしようとした足を止めた。
「大丈夫だから、陽翔」
「傷残っちゃうよ。病院行こう」
「…うん」
—————
男は気づいたら、無機質な殺風景な部屋の真ん中に座っていた。
「………なんだここは?」
後ろから首をグイっと掴まれ、白い少女と目が合った。
「あ、あなたは」
百合はそのまま男の顔を床に叩きつけた。
梅は転がった男の腹に足を置く。
「な、なにを」
「あなたは美しいですね。
お酒も飲まないし、タバコも吸わないそうですね」
「ぇ…?」
「くださいよ、あなたのことほしがる人がいるかもしれません」
「美しい者しか食べない、と言ったそうだな。
半分当たりで半分不正解だ」
「え?」
「私は、「美しく、若い、穢れのない」少女しか食べない。
お前はその分母を減らしたな」
「え…?え…?」
「あなたにこの世がひた隠しにしている秘密を教えてあげましょう」




