第四十五話 検視
「ブス、ブス、ブスばっか」
男はそう吐き捨て、女性の首を絞め殺し、ノコギリで解体していく。
男は自分勝手な価値観で、女性を醜いと断罪し、殺していた。
「あの人たちの目に入ったら腐ってしまうだろ」
男は、あの屋敷で見かけた天井人を思い出し唇を噛み締めた。
「ブスはしね!しね!」
男は息をしていない女性になおも刃物を突き刺した。
————
ミヤコは、都内で見つかった死体の一部を検視した。
梅が遺体の一部を持ち帰り、ミヤコに指紋採取を依頼したのだ。
「時間がかかっちゃって、ごめんなさい…」
「いいえ、たっぷりと時間をかけてください」
梅はぴくりとも笑わず、ミヤコを見下ろした。
「頑張ってDNAも調べますから…もう少しだけ…」
「いいんですよ、あなたに怒っていないので」
「こんばんは」
「日向くん、どうしたのですか?」
「手伝えることあるかなって」
日向は医学性のため、意欲が湧いたようだった。
「では、ミヤコさんの指示に従ってください」
梅はそう言うと足早に去ってしまった。
ミヤコは近くにあった、鋏を日向に投げつけた。
「危ないな」
「せっかく2人っきりだったのに!!
邪魔してんなよ!!」
ミヤコは日向にヒステリックに叫んだ。
ミヤコはその言葉を聞き、机の上にあった本を投げ捨てた。
「あなたになにがわかっていうの!?
わたくしはこんなにも梅様に尽くしているのよ!」
「へぇ」
「なんなの!?
人を好きになったことがないんでしょ!?」
「あるよ」
「嘘よ!」
日向は黙って、ラナの画像をミヤコに見せた。
「僕の女神」
「なによ、こんなもの!」
ミヤコは日向の手をバシッと叩いた。
いたた、と日向はスマホを拾った。
「僕は孤児院で育ったんだ」
日向の言葉に、ミヤコはぴたりと動きを止めた。
「5歳だったかな。
パパとママはお星さまになったんだ。
で、君のお星さまはどれ?」
日向は窓を開けて、夜空を指差した。
「両親と姉は生きてるわよ」
「よかったね」
「でも私には梅様だけなの!」
「僕だってラナだけだよ」
「僕はラナが元気でいてくれさえしたら、それでいいんだ。
ラナが笑ってくれるために、ラナの笑顔が見たいから、生きてる。
ラナを傷つける奴を排除するために、生きてる」
「………」
「ラナを泣かせる奴は、絶対に許さないって決めてるんだ」
「………」
日向の言葉に、ミヤコは涙を流した。
「ねぇ…抱いてよ」
「なんで?」
「寂しいの!わかってよ!」
「ラナ以外は抱かない」
その言葉に、ミヤコは鼻を鳴らして泣きじゃくった。
「友達になる?」
「いやよ!」
「なんなんだよ」
珍しく日向は困ったような表情を浮かべた。
「ほら、はやくやろう。
梅くんを喜ばせたいんでしょ?」
「…うん」
2人はようやく遺体の一部へと向き直した。




