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第三十六話 できると思ってた


「ふぅ…」



稽古ははやくも折り返し。

もうすぐ初日を迎える。



『急に日本に帰るだなんて…そんなの決められないよ…

私は…』



ヒロインであるつむぎは日本に帰国するか、イタリアに留まりレオナルドたちといるかで人生に迷っているようだ。


仲間から裏切られたり、意中の相手とすれ違ったり。




「ヒロインも悩んだりするんだな…そりゃそうか〜」




あおいは家で台本を読み返し、自身のスマホを見つめる。




「も〜ダメダメ!

かわいいあおいちゃんをみんなに届けなきゃ!」



あおいはかわいらしいパジャマに台本を携え、自撮りをする。

それをSNSに載せると、すぐさまいいねやコメントがついた。




『はじめまして、あおいさん!

つむぎが大好きで、あおいさんを知りました。

あおいさん演じるつむぎが楽しみです!

この作品の舞台が見れて、嬉しいです!』



というリプが目に入り、あおいはそっといいねをつけた。




「……頑張るか」




舞台初日。



陽翔は涼太とラナには内緒で来ていた。

(涼太とラナと観に行くのは、3日目午後公演の予定だった)



「陽翔!3日目に来るんじゃなかったの!?」



「舞台って高いんだね、あおい、チケット代ちょうだい」



「お前自分で来といて…!」




「なんなんだよ全く」



「だって忘れられない舞台にしてくれるんでしょ。

それなら1番最初の観たいじゃん」



「おーおー言ってくれるね、クソガキが!

あおいちゃんのつむぎがかわいすぎて、忘れられなくなるからな」



「うん」



そう陽翔にビシッと指を差し、あおいは準備のために楽屋に戻った。


陽翔は自身の指定された席で開演を待とうと、席を探していると、仮面をつけた男がいるのが目に入った。




「…え、隣?」




この人なんで会場に入れたんだ。




変な奴の隣になってしまった…、と陽翔はチラッと男を見る。



「変な人」



あ、やば、声出ちゃった。



仮面の奥に光る瞳がギロっと陽翔を睨む。

しかし、それだけで特になにをするわけでも、なにかを言ってくるわけでもなく、仮面の男は陽翔から視線を外した。




気まずいな…と陽翔は思いながら、ようやく舞台が始まるのか、照明が徐々に暗くなっていった。





———




「あおいかわいかった」




「だろ〜!?どこかわいかった?」




「レオナルドとキスするとこ」



「んんんっ、クソガキ!」




「つむぎ、合ってたよ」



陽翔はいつの間にやらダウンロードしていたのか、ゲームの画面を見せてきた。



「…それ言われるの、かわいいより嬉しいわ。


ってお前めっちゃやりこんでんじゃん!?」



「全ルートクリアした」



「暇な高校生か!

あ、いや高校生か」




「観に来てよかった。

3日目は涼太とラナと来るから」



「もうあおいちゃんのファンじゃん、この後焼き肉行こうよ」



「まじか」



「どっかで待ってなさい、オレ奢ってやる」



「うん」




あおいは急いで楽屋に戻り、着替え、届いたファンレターを丁寧にショッパーに入れる。




「…ちょっとだけ」



陽翔には悪いけど、一枚手紙を手に取り、破かないよう丁寧に開封する。



『あおいさんへ


初日公演お疲れ様でした!

思わず急ごしらえで書いた手紙です。


あおいさんが演じるつむぎちゃんが理想通りで、声も似ていて、泣いてるシーンも綺麗でした。


言いたいことかきたいこといっぱいありますけど、


あおいさんがつむぎちゃんでよかったです!


千秋楽も観に行きます、最後まで怪我や病気に気をつけてください!


つむぎちゃんを演じてくれて、ありがとう』



手紙には短いが、そう綴られていた。



「あおいさんがつむぎちゃんでよかったです」



この言葉に、あおいは胸がじんわりとあたたかくなった。



「…陽翔…」



陽翔を待たせているんだった。



オレがつむぎでよかったって言われたのは、きっとヒーローを途中でやめたからだ。


どっちもやっていたら、どっちも中途半端で終わっていた。



できると思っていた。


今まで、どれだけの覚悟でアイドルをしてきたか。



だけど、アイドル活動、舞台活動、ヒーロー活動の3つを通し、自分の限界が見えた気がした。



でも、オレは…




「陽翔、お待たせ」



「待ったよ。游玄亭(ゆうげんてい)がいい」



「調子乗るな!」



陽翔がにこにこしながらカルビを食べる姿を見て、あおいは目を伏せる。



「陽翔…オレさ」



「冷めるよ」



「うん…あのさ」



「あおいのハラミ、もらうね」



「話聞いて!?」



「焦ってるの」



「え…うん」



「焦るんだ。あおいも」



「オレをなんだと思ってるの!?」



「かわいいアイドルで



俺らの兄貴分」



「…そうだな。

もーヤケだわ!高い肉たのも!」



「あおい様、今日もかわいいですね」



「媚び売るな!」



「つむぎを演じきるよ、陽翔」



「うん。みんなにかわいくて強いつむぎを見せてあげなよ」



「そうする!」



あおいはそう言い、高い肉を陽翔の器によそった。



そうして舞台公演も残すこと3日となった。



「あーラナちゃんに見られるの1番緊張したわ。

でもラナちゃんの喜んだ顔、かわいかったぁ」




ラナの笑顔を思い出し、ニヤニヤしながらお手洗いから楽屋に戻ると、なにやら演者がザワザワと騒いでいた。



「どうしたの?」



「あおいちゃん…



田邊が、炎上してて…」



「は?」

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