第三十四話 抜擢
「オレさ、舞台の出演決まった」
「「え」」
「すごいじゃない!
どんな舞台なの?」
あおいの言葉に、陽翔と涼太はきょとんとし、ラナは目を輝かせ食いつく。
「なんか乙女ゲームの2.5次元の舞台。
オレも今ゲーム進めてんだ」
そう言い、イケメンが映るゲームの画面を見せてくれた。
「どんな役」
「ヒロインだってさ」
「大丈夫なの」
「なにが」
「男だってバレないの」
陽翔の言葉にあおいは、ふふんと鼻を鳴らす。
「お前らだって気づかなかったろ?
あおいちゃんなら大丈夫!」
「このゲーム、ラブストーリーなのかぁ」
「へぇ〜楽しみね」
涼太とラナもゲームをダウンロードし、きゃっきゃと盛り上がった。
あおいは2人を見て、ズーンと落ち込む。
——なんで、なにが悲しくって、男とラブシーンやらなきゃいけないんだよー!
と、あおいは嘆いた。
「俺たちも見に行くから」
「うん、楽しみ!」
「は、ははは、忘れられない舞台にしてやるよ…ははは」
———
「え、舞台出演!?」
蜜樹はあおいのSNSの公式発表を目にし、悲鳴をあげた。
「待って待って、乙女ゲームのヒロイン!?
えぐ!めっちゃメインじゃん!
しかもメインヒロイン、あおいちゃんのみ出演!?」
運営…わかってらっしゃる!!
舞台では時折、1日ごと(または、午前、午後にわかれて)に演者が変わることがある。
ヒロインによくある事なのだが、この舞台は初日から千秋楽まで、メインヒロイン役はあおいただ1人だけだ。
「そういえば、あおいちゃん…
ヒーローに変身したとき、ちょっと男の子みたいで、かっこよかったな…
あれが素なのかな?
待って、あたししか知らない、あおいちゃんの顔…って、コト!?」
あたしでいいんですか、あたしだけ知っていていいんですか、神様!
あ、でも敵対してるんだったわ。
しぬ。
「でもそんなこと、今はどうでもいい。
全通させていただきます(敬具)」
舞台の顔合わせと本読みの日がきた。
この日は出演者全員と初めて会い、台本を読むということになっている。
いわば、自己紹介と交流を兼ねている日である。
「主人公のレオナルド役の田邊瑠夏です、よろしくお願いします」
なんで、外国人のキャラクターが日本人が演じるわけ?
あおいはニコニコと笑みを浮かべながら、心の中で愚痴をこぼした。
主なあらすじ
イタリアに語学を学ぶため、留学行った、つむぎは現地でスリに合ってしまい、全財産をその場で失ってしまう。
あてもなく、途方に暮れていると、謎のイケメン、レオナルドがすられた財布を取り戻してくれたのだ。
彼に見返りを求められ、下働きをすることに。
しかし、彼はイタリアンマフィアのボスで——…!
と、いう内容だった。
いや、留学はどこにいった。
てか見返りとか女の子に求めるな。
「ヒロインのつむぎ役の、あおいです。
精一杯頑張りますので、よろしくお願いしますっ」
なんとか自己紹介と本読みを終わらせ、レンタルルームを出ると田邊瑠夏とかいう主人公の俳優に声をかけられる。
「あおいちゃん、一緒に帰ろうよ!」
「え、あ〜…そ、そうですね」
これから舞台が始まるので、無碍にすることもできず、了承をする。
こいつ、プロ意識ないな?
この姿をファンに見られたらとかないのだろうか。
はあ、不安だ…!
あおいの憂鬱な舞台ライフが幕を開けた。




