第二十九話 追跡
「うーん………うん!
無理だな!」
あおいは涼太と陽翔に今流行りのメイクを施したが、出来栄えを見てなんかごめんと言った。
「スカートはかされて悪口」
「ひでぇ」
「オレの腕を持ってしても可愛くできなかった…女の子長いことやってるのに…」
「何年」
「4年」
「みじか」
「3人とも!
アザミさんがルートを絞ってくれたわよ」
バタンと扉を開け入ってきたラナだったが、女装をした陽翔と涼太を見て固まる。
そしてそっと退室していった。
「ほらな、ああいう反応になるんだよ」
ズーンと陽翔と涼太は落ち込む。
「いや!まだわからない!」
「もしかしたら敵がかわいいと思うかもじゃん」
「諦め悪〜
なんで自ら傷つきに行くんだよ」
「だって俺、白衣着てるやつに言い寄られてるし」
「多分今の姿見たらもう言い寄られなくなるんじゃ…
まぁそっちのがいいか。
かわいそうに、陽翔…」
陽翔の言葉にあおいは哀れみの目を向けた。
確かにあいつに嫌われたらそれはそれで結果オーライだった。
「ラナ呼んでくる」
「俺も行く!」
「せめて着替えろよ…」
アザミが割り出してくれたルートを確認し、ラナ涼太、陽翔あおいの2組に別れる。
ラナとあおいもウィッグを被り、いつもと違うメイクをし、別人になりすます。
「涼太、本当にそれで行くの…」
「え、どっか変!?」
「変よ」
186センチにヒール履いたらデカすぎだし、筋肉でパツパツだよ、服が可哀想。
ラナにそう言われ、涼太はまた落ち込む。
ワイヤレスイヤホンをつけているのをウィッグで隠し、グループ通話で状況を把握し合う。
「本当にうまくいくの?」
「いかないだろ」
ラナとあおいは変装をした2人を見て頭を抱えた。
「!あおい
バスがきた」
「!
じゃあオレが…」
「俺が行くからあおいはそこにいて」
陽翔は道路の前に自信満々に立つ。
バスが停まることはなかった。
「な、なんで」
「わかりきってただろ」
落ち込む陽翔を尻目にあおいはラナにルート確認を取る。
「多分ラナたちがいる方に行ったかも。
オレたちは第三地点向かうわ!
ほら、主人公、しっかりしろ行くぞ」
「うん…」
「わかった。
涼太、私が」
「陽翔の思い、俺が無駄にしない!」
涼太はラナの言葉を聞かず、道路に立つ。
バスは減速せず、当たり前に過ぎ去っていった。
「なんで!?」
「涼太…馬鹿なの?」
「あぁ、こういう作戦苦手だ!」
涼太はヒールを脱ぎ、スニーカーに履き替える。
体を伸ばし、走り始めた。
「……?」
日向はバックミラーを見て、驚愕した。
「え、妖怪…!?」
大通りの交差点で振り切るしか無い。
日向は黄色信号に変わっているところにアクセルを思い切り踏んだ。
クラクションを鳴らす車を無視して、突っ切りさすがにもう追って来ないだろう、と思い、ちらっとバックミラーを確認する。
まだ、ついてきてる。
こいつはあれだけの距離を全くスピードを落とす事なく、車を正確に避けついてきてる。
なんて運動神経と反射神経なんだ。
「君!止まりなさい!
君!!」
「え!?俺!?」
涼太は白バイに呼び止められ、気を取られてしまった。
バスはその隙に角を曲がり、見えなくなってしまった。
「あ…!!」
「君!スカートで、道路の真ん中を走るなんて、なにをやってるんだ!」
「あ…」
「驚いた。
19年生きてきたけど、妖怪に出くわしたのは初めてだ」
都市伝説として噂となっているバスを運転し、妖怪に追いかけられるだなんて、言い得て妙だな。
いい経験をした、と日向は冷や汗をかきながら、笑みを浮かべた。




