第二十八話 誘拐バス
「ねぇ、あの噂知ってる?」
「なに?」
「かわいい子しか乗れないバスがあるんだって」
「なにそれー」
「どこから出てるのかわからないんだって。
巡回しててかわいい子がいたら停めてくれるみたい」
「そんな怪しいのに乗らないでしょ!」
「それがすごいデザインがかわいいんだって。
内装も映えるし、なにより運転手がめちゃくちゃイケメンなんだって」
「へぇ〜、私も乗ってみたいかも」
「しかもさ」
「行き先はさらによくて、高級ホテルとからしいよ」
「えーなにそれ!
かわいい子の特権かぁ、いいなぁ」
—————-
「お姉さん」
美しく髪を巻き、タイトなワンピースを着ている女性の前に一台のバスが停まり、プシューとドアが開く。
「え?」
「綺麗なお姉さん。
君は特別、綺麗だなーって思って、停めちゃいました」
「なにそれ、ナンパ?
てかこのバス、今話題のやつだ」
本当にあるんだー!と女性はテンションが上がり、バスの写真をパシャパシャと連続で撮る。
「よかったら、お手をどうぞ」
女性はその男の顔立ちと紳士ぶりに少し顔を赤らめ、男の手を取った。
「わ、中もかわいい」
「…ところで、これどこ行きなの?」
「あの世」
日向は馬鹿な女もいるもんだ、とフッと鼻で笑い、バスを出発させた。
「途中下車はできません」
日向は淡々とそう答えた。
———
「女の子を誘拐するバス?」
涼太は部員から不穏な単語が聞こえ、パンを食べながら聞き直す。
「そう。乗ったら二度と帰ってこれないらしいぜ」
「ま、俺たちには関係ないけど」
女の子。
誘拐。
もしかしたら、と涼太はパンを食べる手を止めた。
陽翔にもこの話を教えなければ、と思った。
———
涼太から話を聞き、陽翔やアザミはあいつらで間違いないと感じた。
バスに乗せて誘拐するだなんて、卑劣だと陽翔は眉を顰めた。
「調べてみよう」
アザミは街中に張り巡らせた監視カメラをチェックするとし、時間をくれと言った。
「でもその調べてる間にも…」
「それさ、女の子しか乗れないんだろ?」
陽翔がそわそわと牛乳を飲む。
その姿を見てあおいは鞄からメイク道具を取り出した。
「変装するっきゃないっしょ」
「「変装!?」」
陽翔と涼太の声が重なる。
「オレだってラナちゃんだって顔はもう向こうに割れてるんだぜ。
ならあっちがびっくりする、かわいい女の子にしてやるよ!」




