第二十七話 精進させていただきます
「君が新しい子か。
陽翔から話は聞いてるよ」
勝は「それにしても君が男の子だとはねぇ」と、あおいをまじまじと見つめた。
「かわいいでしょ?」
あおいはかわいくアイメイクが施された目をパチっとウインクして見せた。
勝があおいを気遣い、ここにいる全員に「あおいの性別、年齢などを口外及びSNSに投稿はしない」等と書かれた書面をわざわざ用意し、あおいの目の前でサインをさせた。
「ありがとう、勝さん。
ここまでしてくれるなんて」
「いいんだ、君は陽翔や涼太くんと違い立場があるんだから」
もちろん、陽翔も涼太も従い、書面を交わす。
あおいがジーッと顔を見ている事に気づき、陽翔はストローに口をつけた。
「…なに」
「なーんかやっぱり見たことあるな…一回さ、変身してよ」
「いいけど」
陽翔は言われるまま変身し、あおいは顔を近づけ、うーんと唸ったあと、ピンと閃いたようだった。
「未成年飲酒して切り抜き拡散されてなかった!?」
「陽翔ーーー!!!!」
陽翔は「せっかく忘れてたのに」と呟き、その場に倒れ込んだ。
涼太は陽翔を抱え、揺さぶる。
「陽翔!しぬな!」
「うぅ…はなに、はなに伝えてくれ……明日の夕飯の当番お前になったよ、って……」
「陽翔ーー!!」
「それ、遺言てか伝言」
「切り抜き拡散という現実が陽翔の命を奪った…
許さない、ネット民たちめ…!
あおいはリテラシーのない、ネット民たちに仇をなすべく立ち上がった…
次回、新連載!
あおいちゃんが主人公だよ!」
「まだ生きてる」
「陽翔!よかった!」
ため息をつき、陽翔は変身を解く。
今までも普通にこの格好なってたけど、まさか他の人からも切り抜きの子だと思われているのだろうか。
恥だ。
「あおいちゃん主人公はみんな読みたいだろ!」
「とにかく!」
勝はゴホンと咳払いをした。
「デバイスはあともう一つ残っている。
早急にもう1人の適合者を見つけ、協力し合うんだ。
わかったな」
「あい」
—————
「はぁ…」
蜜樹はベッドに転がり、ため息を吐いた。
「もーどうしよー!!」
推しが、敵側の…ヒーローになるなんて!
「悪の組織にいたら推しがヒーローになって対峙する羽目になった件についてってタイトルでラノベ一本書けそう」
笑えないわ。
「しかもあの男…私の裏垢把握してた」
あおいを逃した後。
罰を受ける、きっと仙のように…と思っていた。
しかし、白衣の男はポケットからスマホを取り出しなにやら操作をする。
「『今回のMV、スカート短すぎ、変態湧いたらどうする、ま、あたしが全員殺すんだけど』」
「……え?」
「『鍵閉め鍵閉め鍵閉め鍵閉め』
「え」
「蜜樹ちゃんのポスト、結構痛々しいですねぇ」
「ま、待って」
「おっと、これは私のことかな
『あいつガチで下手くそなんだけど、毎回いてーんだよ』…
下手でしたか、すみません」
「ぎゃー!!!」
ゆうりが聞いてる!
そう思いゆうりを見やると、なにやら頭を抱えてぶつぶつと唱えている。(円周率)
「痛かったなら謝ります、精進させていただいてもよろしいですか」
「い、いやー!!!」
ふふふ、と笑う白衣の男に蜜樹はただ叫ぶしかできなかった。
—————
「本当散々だった。
なんとか逃げたけど」
次会ったときがこわいな。
蜜樹はスマホを開き、白衣の男に知られた裏垢を削除する。
「疲れた」
そうつぶやき、蜜樹は瞼を閉じた。
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「よろしくね、あおいさん」
「はい!ラナさんとしかよろしくしません!」
ラナの手を掴み、ブンブンと振るあおいに一同は苦笑いを浮かべる。
まさかあのあおいが、大の女好きだったなんて世間は思わないだろう。
それにしても、と陽翔は考え込んだ。
最後のデバイスは一体誰を選ぶのだろうか。
陽翔はまだ見ぬ味方に思いを馳せ、新しい牛乳に口をつけた。




