第二十六話 決めた
26話
「適合…?」
陽翔はデバイスに映っている言葉を口に出す。
デバイスはあおいの方に向けると、ブルブルと振動する。
適合したのか。あの、なんとかっていうアイドルに。
「あかねちゃん!」
「ガッ!」
陽翔はあおいにデバイスを投げると、見事にあおいの頭部に激突した。
「名前呼んでから投げたじゃん」
「あ、お、い!!
名前間違えられたから、反応できなかったわ!!」
命中し、無惨に床に落ちたデバイスを拾い、あおいは震える手で画面を触る。
「は!?あつっ、あっっづ!?
体あついんだけど、待ってこわいって!!」
あおいの長かった髪はボブになり、まつ毛の艶も水色かかり、思わず涼太は「かわいい」と口から漏れた。
「待ってかわいい、待って自撮りする」
「ゔゔっ」
「!お姉さん、どこか痛むんですか!?」
蜜樹は心臓を抑え、うずくまった。
「…これは素晴らしい展開ですね、ゆうりくん!
まさに予想外。
仙くんもこんな気持ちだったんですかねぇ」
ゆうりは惚けた顔であおいを見るしかできなかった。
——俺がなれなかった、選ばれなかったヒーローを、ポッと出のアイドルが…………
脳がその事実に追いついたとき、ゆうりは瞳孔が開き、つり眉はさらに吊り上がり、歯はもう欠けてしまうのではないかというくらい、噛み締めた。
「なんか女の子口説いたらヒーローになれたわ、草」
などとのたまってるあのアイドルが…ヒーロー?
意味がわからない
「でも、なんかよくわからないけど、この白い男をぶっ飛ばしてお姉さんを笑顔にすればいいんだろ?」
あおいはそう言い、白衣の男に向き合う。
白衣の男は顔を紅潮させ、ニヤッと笑った。
「無理無理無理、なんかキモいしこわいわ、みんな退散しよ!」
先程の威勢はどこへやら、白衣の男を見た瞬間、あおいは陽翔と涼太と蜜樹を連れて逃げよう!などと宣言する。
ゆうりはその姿にさらに苛立ちを覚えた。
「帰ってしまうのですか?
まだ物足りないのですが…
それに、蜜樹ちゃんはうちの子だよ」
白衣の男があおいにメスを投げるとあおいは手でそれを受け止める。
「きゃぁぁぁ!
あおいさん!あおいさんの手に……ああ、なんで……!!」
蜜樹は白衣の男を睨むと、男はますます顔を赤らめた。
あおいは刺さったメスを手から抜き、白衣の男に投げ返す。
「お前…!
お姉さんと高校生に当たったらどうすんだ!
特にお姉さんに!」
「アツい展開だ」
白衣の男はソファに腰掛け、あおいを見つめる。
「気持ち悪い………っ
もう、お姉さんにも、高校生にも関わるなよ!?」
「もう、いいから…!」
蜜樹はそう叫び、あおい、涼太、陽翔の背中を押す。
「お姉さん…!?」
「…あたしは、逃げれない…。
もう、あなたに、こんな血生臭い場所にいてほしくないの」
「お姉さん…」
「いいよ、お姉さんも帰ろうよ。
ゆうりも、連れて」
あおいと陽翔が蜜樹の手を引っ張るが、蜜樹は振り払い、部屋から押し出し、鍵が、乾いた音を立てて閉まった。
「ちょ、お姉さん!?」
「涼太、このドア壊せない?」
「…やってみるか」
涼太はドアノブに手をかけ、力いっぱい壊そうとするが、頑丈に作られており、破壊は不可能だった。
「涼太の力で壊せないって…」
「陽翔、涼太」
「ラナ!」
「!?こ、ここにもかわいいお姉さんが…」
「あなたは…もしかすると、あおいさんね。
アイドルの」
「え!知っててくださるなんて…両思いじゃないですか」
「陽翔、涼太。
一度、撤退しましょう。
他に被害者はいないか、他の部屋を回ったけど、今はいなさそう。
出直しましょ」
「ま、待って、ピンクのお姉さん!
中にまだ」
「あの子はヴィランなの。
今日は一度引きましょう」
「ラナ。まだゆうりが」
「きちんと作戦を練らなきゃ。
デバイスは取り戻したし、準備を整えてから、また助けにいこ」
「でも!」
陽翔と涼太は反論するが、ラナの言った通り、ゆうりはきっと今の状況では帰ってこないことは理解していた。
ラナに従うのが、1番いいこともわかっている。
「くっ…!
あかねちゃん、いくよ」
「あおいだっていってんだろ」
お姉さんを救えなかった。
僅かに聞こえる、お姉さんの悲鳴を流して撤退するなんて、ヒーローってなんなんだよ。
あおいはそう思い、胸糞が悪くなった。
———-
撤退し、あおいは息を整え陽翔と涼太に向き合った。
「あの、ゆうりって子はお前らが助けてやれ。
オレはお姉さんを助ける!
女の子はオレがみんな助ける!
わかったな!?」
「当たり前に」
陽翔は力強く頷いた。




