第二十五話 ほっとけないから
「涼太…!」
ゆうりは涼太を鋭く睨んだ。
———俺の右手に、ボールは当たらなかった。
—つまり、ゆうりの手に握られたスタンガンを的確に狙って落としたということになる。
「涼太…!てめぇ…!」
「ゆーり!
怪我はないか?」
「ふざけんなよ…っ!」
ゆうりはサッとスタンガンを拾い、今度は涼太に向けた。
「ゆーり…」
「俺はお前が嫌いなんだよ…なんでいつも構うんだよ…!」
「構うに決まってるだろ。
ゆーりが悪いことしてるなら、止めるのが、俺と陽翔の役目だから。
そうだろ、陽翔」
「うん」
「………っ」
ゆうりは2人に背を向け、扉の前に立った。
「帰れ」
「やだ」
「帰ってくれよ…!」
ゆうりがそう言い、勢いよく扉を開くと目の前にあおいが立っていた。
「うわぁぁぁぁ!?」
「いきなり開けるなびっくりするだろ!?」
「こっちのセリフだ!!」
ゆうりが顔を真っ赤にし、怒鳴っている姿を見て、陽翔と涼太は少しほっとした。
ゆうりは、変わっていない。
「ゆうりちゃーん!
大丈夫!?」
「ぶっ」
駆けつけた蜜樹がゆうりに勢いよく抱きつき、ゆうりはますます顔を真っ赤にした。
「は、離せ、蜜樹!」
「ゆうりちゃん、怪我ない?
大丈夫?」
「チッ、高校生の分際でこんな綺麗なお姉さんに抱きしめられちゃうとか、ラノベの主人公かよ…」
あおいはゆうりを見てわかりやすく、キーっと嫉妬心を露わにする。
「えーと、陽翔、あの2人は?」
「あとで言う。
ゆうり、お前が変わってなくて嬉しい」
「………」
パチパチと拍手をする音が聞こえる。
「今日はこれでおしまいですか?
ゆうりくん、陽翔くん、涼太くん、君たちの友情はかわいらしいですね」
屈託のない笑顔で白衣の男はそう感想を述べた。
この男はこう言っている。
あおいを殺せ、と
考えなくともわかる事だった。
蜜樹は短く、はい、と応え、未だ血が滲む包帯が巻かれた手を構えた。
「蜜…!」
ゆうりは蜜樹に手を伸ばすが、白衣の男に後ろから抱きしめられ、身動きが取れなくなってしまった。
ゆうりはゾワっと全身に悪寒が走った。
しかし、ゆうりはすぐに解放された。
陽翔が白衣の男を殴ったからだ。
「ゆうりに触るな」
「あぁぁ、陽翔くん、君強くなったね」
「汚い手でゆうりに触るな」
「大丈夫か、ゆーり」
もうやめろ、俺にもう構うな。
たったその一言が、もう口から出なかった。
その様子をあおいはじっと見つめる。
「あおいさん…ごめんなさい…っ」
その言葉にあおいは、ハッと我に返り、蜜樹の顔を見ると涙が目から溢れ落ちていた。
「お姉さん…」
「あた、あたしっ…あおいさんのこと…うっ…」
言葉に詰まる蜜樹に、あおいはそっとハンカチを差し出した。
「なん…なんで!?
あたし、今あなたをこ……こ、殺そうと…!」
「泣いてる人をほっとけないから。
泣いてる人を笑顔にするのが、役目だから」
あおいの言葉に、陽翔のポケットに入っていた青いデバイスが震える。
「え」
「適合…?」




