第二十四話 決まった…!
陽翔はあおいを押し、裏口まで走るよう指示をし、壁に隠れながら足音の正体を探る。
ゆうりだ…!
ゆうりは廊下の真ん中で止まり、腕を組み、足をトントンと、いかにも不機嫌です、というのを隠そうとしていなかった。
「蜜樹を信用なんてするんじゃなかった」
ゆうりはぽつりとつぶやき、部屋に入っていった。
1人かな…
陽翔は部屋の前で聞き耳を立てるが、会話してる様子も、誰かがなにかをしてる音も聞こえなかった。
1人だとわかり、陽翔は扉を勢いよく開けた。
「ゆうり」
「うわぁぁぁ!びっくりした!」
ゆうりはソファから落ち、バクバクと鳴る心臓を抑えながら陽翔を睨んだ。
「そんなびっくりしなくても」
「いや脅かすな!
てか、なんでここにいるんだよ!」
「えっ」
「…」
「…び、美容に興味があって…」
「嘘つくなよ」
お前が美容に興味なんてあるわけないだろ、とゆうりは吐き捨てるように言った。
「ゆうり、帰ろうよ」
「…どこに?」
「え?家に帰ろうよ」
ハァ…とゆうりは立ち上がり、引き出しからなにやら物を取り出した。
「1人で帰れ」
「やだ。
ゆうりの親だって心配してるって」
その言葉を聞き、ゆうりは先程手にしたスタンガンをビリビリと鳴らせる。
その光を見て、陽翔は一瞬ビクッとするが、拳をぎゅっと握り、呼吸を整える。
「帰らねぇって言ってるだろ」
「やだ」
「お前…!」
「だって、それ使う気ないんでしょ」
「…!」
「でも」
陽翔がなにか考えたように、口を重く開いた。
「俺が帰らなきゃゆうりが、それ使わなきゃいけなくなるんだったら、帰る」
「…!ふざけるなっ!」
ゆうりはそう言い、陽翔の首元に目掛けてスタンガンを当てようとする。
「!ゆうり」
「はぁはぁ……」
ゆうりは涙目で震える両手でスタンガンを握りしめた。
「ゆうり」
「うるさい!」
ゆうりは的確に急所を狙ってきているのがわかるが、震えていたため、陽翔は避けることができた。
絶対に当たるわけにはいかない。
2人の攻防は続き、息も上がっていた。
ゆうりがバチバチっとスタンガンを鳴らし、陽翔の首元を狙った。
その瞬間、ゆうりがスタンガンを持っていた手になにかが当たり、ゆうりはスタンガンを床に落としてしまった。
「…!?なん……
野球ボール…?」
「———陽翔、大丈夫か?」
ゆうりはつり眉をさらに吊り上げ、ギリっと奥歯を食いしばった。
「涼太…!」
————
「もうー、陽翔とやらまたいなくなっちゃったよ、高校生をおいていけるわけ〜」
あおいが文句を垂れていると、手前の扉が開き、綺麗な女の子が出てきた。
うおおえええ!?めちゃくちゃかわいい!!
と、あおいは目をハートにし、蜜樹を見つめた。
「!?あ、あ、あ……
あなたなんで、まだ…」
「お姉さんを助けに戻りました」
「な、なに言ってるの!?
はやく、逃げないと!」
「じ、実は、お姉さんに言われた陽翔って子と戻ってきて、見失っちゃったんですよね」
あおいがてへっと笑う姿に蜜樹は心臓を抑えた。
「え、大丈夫ですか?」
「……とにかく陽翔ちゃんなら、大丈夫だから…はやく、あなたは…」
あおいは蜜樹の血が滲んでいる指先の包帯を見て、先程のネイルはやはり彼女のものだったのだな、と確信する。
「なんか、あっち騒がしくないですか?」
「…え、えと…そうですね。
だからあたしも様子見に行こうかと」
「私が見てきます。
お姉さんはここにいて。
危ないから」
「え、ええ!?
あおい、さん!ちょっと!おいとかないで!?」
決まった…!
そう思いながら、あおいは件の部屋へと向かった。




