第二十一話 賭け
「え、ゆうりやめちゃったんですか」
陽翔はゆうりが働いていたドーナツ屋さんで、その旨を聞かされがっくりと肩を落とした。
家に行ってもいないし。
陽翔はため息をつき、ドーナツ屋をあとにした。
————-
ど、どうしよう…あおいちゃんがもしかしたら、標的に…!?
あたしどうしたらいいの…!?
いや、まだ普通に肌管理しにきただけの可能性もあるよね…!?
気づけば蜜樹はあおいが案内された部屋の前にいた。
—大丈夫大丈夫、確認したら戻るだけだから本当に
と、自分に言い聞かせ、聞き耳を立てる。
少し聞き取りづらいが、恐らくしばらくは肌管理と食事管理は徹底して行うはず。
今すぐどうこうってことは、ないはずだ。
多分。
話が済んだのか、いきなりドアが開き、蜜樹はギクっとする。
「……なにやってるんだお前」
「え、えー別に」
ゆうりに不審がられ、蜜樹は目を泳がしながら適当に流す。
「…まぁいいや。俺、席外すから、あのアイドルのこと見張ってろよ」
「え!、あたしが」
「うん。じゃ、よろしく」
蜜樹の言い分も聞かないまま、ゆうりはさっさとどこかへ行ってしまった。
多分、白衣の男を呼びに行ったか、インナーケア製品を取りに行ったかわからないけど…
すぐ戻ってくるはず…
「お姉さん、ここの人なんですか?」
「へ!?い、一応、そうですね…」
顔良、顔小さ、スタイル良…
今日は肌管理に来ただけだから、すっぴんで来ちゃった、マスクと帽子してきて正解だった…
「すごいですね、ここ。
徹底されてて。
撮影する日が楽しみです」
「…撮影?」
「ここの広告塔に選んでもらったんです、すっごく嬉しいです」
「……」
残念だけど、撮影なんてないのよ…
撮影する日、あなたはきっと…
蜜樹は黙って、唇を噛んだ。
今までだって、たくさんの女の子が犠牲になってきた。
なのに、あおいだけは、助けたいと思ってしまう自分が腹立たしかった。
本当は、他の女の子だって助けたかった。
あたし最低かも。
推しだけ助けるために動くなんて。
陽翔くん…
あの子、変身してなかったのに、あたしの攻撃、流してたな。
ヒーローか…
かけて、みようか。
陽翔くん、お姉さんからのお願い。
あおいちゃんを助けて。
「あおいさん。
ちょっと待ってて」
「?はい」
蜜樹は急いで、貴重品を管理している部屋に向かった。
白衣の男は基本的にこの院にいるから、貴重品はここに置いている事が多い。
「多分、百合様の誕生日…」
やっぱり。
あの男も案外単純だ。
蜜樹は急いで学校の名前と陽翔の名前をメモ用紙に書き、デバイスを手にした。
「——あおいさん!」
「あ、お姉さん」
のんびりしているあおいの手を引っ張り、院の外へと出す。
そして、メモとデバイスを手渡した。
「この陽翔って人を尋ねて。
このデバイスを無くさないで。
もう、二度とここには来ないで」
「お、お姉さん、震えてますよ、顔色も悪そう…
それにもう来るなって…私は、仕事で…!」
「とにかく来ないで。
さよなら」
バタンと扉を閉め、蜜樹は息を吸い込んだ。
「どうしよう、触っちゃった、話しちゃった…
大丈夫、大丈夫だよね。
これで、きっと…」
「なにが大丈夫なんですか?」




