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第十八話 決裂


陽翔は授業を受けながら、温泉街のときのことが忘れられなかった。



美しくなくなったから、殺す?


好きだから勝手にやっていた…?



意味がわからない。



「…………」



「竜胆聞いてるのか?」




「……………」



「廊下に立ってなさい」



話を聞いていないのがバレたからって、今時廊下立たすはないだろ。

そう思い、廊下の窓を開け、外を眺める。



物思いに耽っていると、ガラっと教室の扉が開き、教師が冷たく言い放った。



「放課後まで立ってろ」



クラスから笑いが起き、陽翔はガックリと肩を落とした。



ため息をつき、空を見上げると青空に飛行機雲だけが綺麗に残っていた。



結局放課後まで立たされるなんてことはなかったが、クラスからの嘲笑が恥ずかしかった。



「涼太は部活か」



放課後理数科に行くと、すでにゆうりの姿はなかった。




「……涼太はショートケーキ好きだったな」



涼太に差し入れして、ゆうりの家にも持って行こう。



———


「金鞠、お前は私の期待に応えてくれるよな」



「…はい、おまかせください」



広間で正気のない顔で、蜜樹は頷く。

自分は決して仙のようにはなりたくない…と思いながら、陽翔の元へと向かった。


———



ケーキ屋に入り、なにやってるんだろ、と思いながら購入した。



涼太の誕生日にゆうりの分も持って行ったときは、ちょっと照れくさそうに食べていた。



ケーキ屋を出るとふわりと抱きしめられる。



「え」



「君が陽翔ちゃん?

ゆうりちゃんと同じくらいかわいい」



「え…っ」



いきなり知らないかわいい女性に抱きしめられ、混乱していたが、ゆうりの名前を出され、我に返る。



「な、なんでゆうりを」



「うふふ」



陽翔は蜜樹の顔を見て思わず赤面する。

蜜樹がかわいいからだ。



踏み込んだ足とは逆の手で、一直線に正拳突きが放たれた。


「——っ!」


反射的に首を引き、陽翔は間一髪でそれをかわす。

風圧が、頬を掠めた。



「っ、いきなりなにを」



言葉を言い切る前に、蜜樹の前蹴りが腹を狙う。

無駄のない動き。腰が落ちている。



陽翔は咄嗟に腕で受けたが、衝撃が骨に響いた。



「くっ…」



後ろに数歩、弾き飛ばされる。



「へぇ」



蜜樹は感心したように目を細めた。



「今の、避けられるんだ」



ま、まずい。

なんとかケーキを死守しなきゃ。

そう思い、陽翔は踵を返した。



「わっ」



「………」



「ゆ、ゆうり…!」



なんとかケーキを守りながら走ったが誰かとぶつかってしまった。



チャイナ服のようなジャケットを着たゆうりだった。



「……イメチェン?」



「…………」



「なんだよ、なんか言えよ」



「……相変わらずだな」



「あ、ゆうりちゃん!あたしのターゲットよ」



「…?知り合いなの。ターゲットってなに」



「俺とお前はもう敵同士なんだよ」



「っ、なに言ってるんだ、勉強のしすぎだよ。

ほら、ケーキ」



バシッとゆうりは陽翔の手を勢いよく弾き、ケーキは箱ごと地面に落ちる。



「なにすんだよ…」



「もううんざりなんだよ!

お前の善意の押し付けなんて」



「意味わかんねぇよ、なんだよ敵同士って」



「白衣の男にスカウトされたんだ。

この組織に入れって」



「は」



嘘だろ、と陽翔は反芻する。



「悪い冗談だろ…はなを誘拐した連中だぞ!」



「っ、」



「いくなよ、ゆうり。

ヒーローになれなかったのはなにかの間違いだって———」



「………間違い?」



「俺の存在が間違いだっていうのかよ」



「ちがっ」



ゆうりはケーキの箱を踏みつけ、陽翔に背を向ける。



「ちょっと友達でしょ、いいの?」



「こいつは…陽翔は…」



「友達じゃないです」



「ゆうり…っ」



ゆうりは振り向かず、蜜樹の腕を引っ張り、帰るぞと告げた。



「ちょ、ちょっと待ってよー


じゃあね、陽翔ちゃん」



「ゆうり…どうして…」



陽翔は潰された箱を見つめ、立ち尽くすしかできなかった。



————-



「そうか、そんなことが」



警察署に、勝、アザミ、ラナ、涼太のメンバーが集まり、なにがあったか話した。




「まずいな」



「?」



「デバイスを、ゆうりくんは持っているだろう」



勝の言葉に陽翔は息を呑む。



「もし、敵がデバイスを調べたりしたら」



「ゆうり………どうして…」



「簡単じゃないか」




涼太が陽翔の肩に手を置く。



「デバイスもゆーりも取り戻すまでです。

ゆーりは口悪いけど、非行なんかに走るやつじゃない。

…だけど、もしそうなったら止めてあげるのが、俺らの役目だろ」



「そうだな」




絶対にデバイスを取り戻して、ゆうりを止める。

そう強く決意した。


涼太が、ラナがいてくれるから大丈夫だと、陽翔は信じていた。



——その「大丈夫だ」という確信が、

いちばん危ういものだとも知らずに。

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