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第十五話 嫌な予感

15話



涼太が刺され、吐血した。

何度揺さぶっても起きない。

心臓が動いていない。



「涼太…!」



場面は変わり、両手両足を縛られ、スタンガンが首に当たり、思わず悲鳴をあげる。


水沼は、ナイフを思い切り振りかぶって……



陽翔はその瞬間目を覚ました。




手は震え、動悸がおさまらない。

ものすごい汗だ。




涼太は……規則正しい寝息を立て、隣で眠っている。




「夢か」



ため息をつき、窓を開け、夜風にあたる。




「ゆうり…」




「本当にゆうりって子が大事なんだね」



いきなり背後から話しかけられ、陽翔はびくっと肩を震わせる。



「ラナ」



「ごめん、驚かせて。

いいね、幼馴染」



「ラナにはいないの」



「………

あ、ほら、今日は月が綺麗だよ」



あまり言いたくないのかな、と陽翔はラナに言われたまま月を見上げた。



「満月だ」



「風が気持ちいいね」




窓から入ってきた夜風にラナのショートボブが揺れ動く。

その姿に陽翔は、少し胸が高鳴った。



「退院したら、なにがしたい?」



「………牛乳飲みたい」



「なにそれ」




「俺さ」



「涼太とゆうりとヒーローできるんだと勝手に思ってた」



「うん」



「でも、涼太をこんなふうに巻き込んで、よかったのかな」



「………涼太は巻き込まれたんじゃない。

選ばれたのよ。


ヒーローは選ばれた人しかできない。

私もその1人」



「だけど、」



うまく言葉にできない。




「なにがあってもやり遂げるの。

迷ってる時間ないの」



「…………」



いまいち納得はできていない。

だけど、このまま進むしか道はきっと残されていない、そう陽翔は感じた。




「……あ」



「なに?」



「牧場から買った牛乳、消費期限切れちゃったかな…」



「なにそれ」



あはは、とラナは笑った。



数週間が経ち、ようやく2人は退院することができた。



「全く心配させて」



勝はやれやれと陽翔と涼太の頭をくしゃくしゃと撫でた。



「あれ?ラナさんは?」



「ラナは仕事だよ」



「そうなんですね」



ラナの姿が見当たらず、涼太は尋ねたが、それ以上は気に留めなかったようだ。



病院を出ると、外は拍子抜けするほど穏やかだった。



——何事もなかったみたいだ。



そのことが、陽翔には少しだけ怖かった。

やっとゆうりに会える。



そう思い、少し浮き足立った。



「牛乳買ってくる」



「おー」



病院の売店で牛乳を購入し、お金を払おうとすると、後ろから伸びてきた手が500円玉がを店員の手に落とした。




「え」



「こんにちは、陽翔くん」



「お、お前…」



白衣の男だ。

陽翔はグッと身構え、ちらっと店員を見ると不可思議なものを見る目だった。




「とにかく、外へ」



グイっと男の腕を引っ張ると、顔が紅潮していた。


気持ち悪いな。



「なにしにきた」



「退院おめでとう、陽翔くん」



「質問に答えろ」



「いいことを教えにきたんだ」



「いいこと…?」



「大事なものはもう戻れないかも。

それでは」



「…は?」



陽翔は男がなにを言っているか理解できず、その場に立ち尽くした。







男の姿は、いつの間にか人混みに紛れて消えていた。


——大事なものは、もう戻れないかも。


その言葉が、頭の奥で何度も反響する。



「……なんなんだよ」



陽翔は、手にした牛乳を見下ろした。



まだ冷たい。

賞味期限も、切れていない。


なのに。


なぜか、それを飲む気にはなれなかった。

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