第十四話 休息
「若松さん、点滴入れますよ」
「さっき逃げたみたい」
看護師は陽翔のその一言を聞き、ため息を吐く。
涼太は幼い頃から、歯医者や病院…特に注射などが怖くて怖くてたまらないようだった。
「全く…竜胆さん、見つけたらすぐ教えてくださいね」
看護師は苛立ちを隠せないまま、部屋をあとにした。
「よっしゃ、なんとか点滴イベントから逃れた」
「逃げられないわよ」
「ラ…、ナさん…!」
涼太の背後に忍び寄り、腕をがしっとつかむラナ。
「待って待って待ってください!怖いんです、点滴が!」
「なに言ってるのよ、あなたもう17歳でしょ?
わがまま言わないの!」
涼太を無理矢理引っ張ったが、あまりの重さにラナは尻餅をついてしまった。
「大丈夫ですか」
転んだラナを、帽子を深く被りマスクをつけた少女が、さっと手を差し伸べてくれた。
「あ、ありがとうございます」
「気をつけてくださいね、お姉さん」
そう言い、綺麗なロングヘアを靡かせ、去ってしまった。
顔はよく見えなかったが、美少女な予感がする。
「あ!?涼太くんがいない!?」
もーどこに行ったの!?
とラナは地団駄を踏んだ。
「はぁ…なんとかまいたぜ。
昔はよくゆーりに、怒られてたっけ」
小学生の頃、陽翔とゆーりとキャッチボールをしたり、バッティングセンターに行ったりしたっけ。
ゆーりは出会った頃から努力家で、出来ないことにもとにかく全力で、できるまで何度も何度も向き合ってやめない奴だった。
だから、ゆーりがあんな風に落ち込んで、学校に来なくなるだなんて、陽翔がそれを見て落ち込んで、友達2人がしんどいのに、どうすれば元気になってもらえるだろう。
「どうしたらいいんだろうな。
昔みたいに、3人でさ」
陽翔もゆーりもこんな落ち込むとこ、見たことねぇよ。
でも、そうだな。
まずは俺が元気にならなくちゃ意味ないな。
「なんで、急に点滴受ける気に」
「点滴は俺の天敵だけど…俺頑張るから…!」
「つまんない」
陽翔はそう言いながらも、くすりと笑みを浮かべた
「え、今のってギャグだったの!?」
「あ、つまんないって言われるよりきついっす」
あはは、とラナは笑う。
「なんだか、久しぶりに笑えたかも」
「…こんな日もあってもいいですね」
「……うん」
陽翔は窓を見ながら頷いた。
久しぶりに、ゆっくり眠るのも、悪くないかも。
———退院したら、俺が、ゆうりに会いに行こう。
そう思い、陽翔は目を閉じた。




