第十三話 水槽に
「……ん………」
「起きた?」
「…おきた」
陽翔は隣で寝てる涼太をちらっと見て、安堵した。
顔色が良くなっているみたいだ。
よかった。
「改めて、私はラナ。
よろしくね」
にこっと笑うラナに、陽翔はなんだか照れ臭くなり、小さな声で「あい」と言った。
がらっと病室の扉が開き、果物を持ったアザミが入ってきた。
「!ラナ。おかえり」
「アザミさん!ただいま!
…と言っても、明日から川崎なんだけどね」
「そうか」
なんだか話についていけず、陽翔は居心地が悪く、手持ち無沙汰でTVをつけるとちょうどワイドショーがやっていた。
『都内某所にて放火事件がありました。
付近への被害も多大で、犯人は依然わかっていません——』
「ここ…この間まで私がいた店…」
「!?」
「一体、だれが………」
「……ラナ、明日はどこにも行かなくていい。
陽翔たちと休みなさい」
「!?でも放火犯を捕まえられるかもしれないのよ」
「とにかく、休みなさい」
「………」
次の日になり、ラナは忙しなく涼太と陽翔のりんごの皮を剥いていた。
「ラナさん、それで5個目っすよ」
涼太はそんなに食べられないと苦笑いを浮かべる。
「あ、ごめん、落ち着かなくて」
陽翔は目を瞑り、ゆうりの顔を思い浮かべた。
お見舞い、きてくれたら嬉しいな。
ラナはとにかく落ち着かないのか、TVをつけ、せかせかとチャンネルを変える。
「あ、この子、すごいバズってた子だよね?
高校でも流行ってるの?」
「あー好きなやつは多いかも」
そう涼太は答え、「なんだっけ、あおいちゃんだっけ」などとぼやいていた。
結局ゆうりが病院に顔出す事はなく、陽翔は少し落胆した。
————
ゆうりは白衣の男が用意した制服に着替えた。
ショート丈のジャケットにはチャイナのようなボタンがあしらわれており、中のインナーも中華を彷彿とさせる制服だった。
「いいんだ。どうせ、俺はあいつらみたいにはなれないんだから…」
「あいつらって?」
「うわぁ!着替えてるんだからまだ入ってくるな!」
「遅いよ〜、アタシも着替えたいの」
そう言い、蜜樹はゆうりの前でジャケットを脱ぎ、ボタンを外し始めた。
「は!??脱ぐなよ、おい!」
「なぁに?意識してるの?」
「ち、ちが…!誰がお前みたいな女に!」
ゆうりは慌てて、背中を向けて足をトントンと踏み鳴らす。
この女は恥という言葉を知らないのだろうか。
「やばい、急がなきゃ」
「…なんでそんな急いでんだよ」
「…えーと…」
そのとき、ガチャリと音がして日向が入室してくる。
「お疲れ様」
「お疲れ〜、日向ちゃんも帰るの?」
「うん。やりたい事あるから」
「…?」
「あ、ここ好きな時間に来て帰っていいのよ。
美容関係ならなんでも無料だし」
「交通費出るしね」
無駄なところはホワイトだな、やってることはブラックなのに…とゆうりは心の中でつぶやいた。
「じゃ、バイバイ」
「うん、ばいばーい。
ゆうりちゃんも気をつけて帰ってね!」
「ゆ、ゆうりちゃん!?
ちゃん付けするな!」
ゆうりが顔を真っ赤にし、蜜樹を睨んだが、本人はどこ吹く風というように、急ぐから!と帰ってしまった。
「はぁ…」
————
ゆうりは広間にある、水槽にいる数匹のカニを見てガラスにもたれかかる。
水槽に浮かんでいる、金髪には気がつかなかった。
—————
日向は自室にある引き出しから過去の日記帳とアルバムを取り出し、愛おしそうに撫でた。
「ラナ………はやく会いたいな……」
ああ、その前にラナの好きなピンクにまた髪を染めなきゃな、と日向は髪をいじった。
「だいすきだよ、ラナ」




