第十二話 人豚
「私は特殊警察部隊のラナ。
あなたを殺人未遂の容疑で逮捕します」
「特殊警察部隊?
どうやってここを」
「鶯谷であなたのこと知らない人はいなかったわ。
もちろん、悪名で、だったけど」
ラナはデバイスを用いて変身する。
「あなたをずっと調べてたと言ったでしょ。
自己顕示欲が強いから、絶対にお店でこんなことをすると思ったわ」
「く…っ」
「外には警察もいる。
観念なさい」
「ぐ…っ」
仙は追い詰められ、さすがに分が悪い。
そう思っていたとき—————
「なにしてるんです?」
「お前…!」
グレーの髪色に白いチャイナを着た———-白衣の男が入り口に立っていた。
「!?あなたどうやって…!?」
「あぁ、上に警察の方々がいましたね。
お疲れのようでしたので、休んでいただいてますよ」
「そんな!?あれだけの人数がいたのよ」
白衣の男は唇に手をあて「シーっ」と息を漏らした。
気絶している陽翔のそばにより、顔を撫で、髪の匂いを嗅ぐ白衣の男に、ラナは戦慄した。
「陽翔に触らないで」
「ふふ。さぁ、帰りますよ、仙くん」
「え、あ、あぁ…」
「待ちなさい!」
「いいのですか?陽翔くんをはやく病院に連れていかないと、色々後遺症が出ますよ」
「………!」
「すでに脱水症状を引き起こしてる。
また会いましょう、陽翔くん、ラナちゃん」
「く…!
陽翔、陽翔、聞こえる?」
————————
「水沼、お前はもう必要ない」
百合はチェス盤を眺めながら淡々と言い放った。
その言葉を聞いた日向と蜜樹は息を飲み、仙を見つめる。
「ま、待ってください…いらないって…も、もう一度だけチャンスを…
「人豚にしてしまおう、そうしよう」
「ひ、人豚って……そ、それだけは、それだけは…!」
日向と蜜樹は連れて行かれる仙を黙って見ていることしかできなかった。
白衣の男は顔面蒼白になっているゆうりに、「紅茶でも飲みますか?」と尋ねた。
「………」
「ゆうりくんにはあんな酷いことしないよ。
それに彼はまだ生きている。安心して」
「い、生きて」
「そう。だから大丈夫」
なにが…?
こんなものを見せられたら、もう戻るなんて選択肢は選べなかった。
——
その晩。
なおうめき声をあげ、苦しげにしている仙の前に日向はしゃがみこんだ。
「仙くん、君は僕にいい情報を教えてくれてどうもありがとう!」
日向はにこっと穏やかに声をかけた。
「人豚かぁ…君が最後に見たのは1番醜い自分だったんだね。
さよなら、水沼仙くん」
「じゃあ、僕は行くとこあるから」
—————-
鶯谷某所
「あの子やめちゃったすねぇ」
「ああ、都合よく動いてくれる子だったんだけどな」
「ああいう使い勝手がいい子ほどすぐやめちゃいますよねぇ」
「ねぇ」
「お、お客様…本日はもう閉店しておりまして…」
「他に女の子たちはいる?」
「え?みんな帰りましたが…」
「ならよかった!」
日向はバシャッと黒服に液体をかけ、店をあとにした。
数百メートル離れた場所で、日向はあらかじめ仕込んでいた爆弾のスイッチを押すと、遠くからガソリンと煙の匂いが鼻についた。
「ラナ…………」
日向はそう呟き、夜の闇へと消えた。




