第十一話 ラナ
「………ん……?」
「目が覚めたか!」
「こ、ここは………陽翔は…!?」
目が覚めると無機質な天井と勝が目に入った。
「刺されたところを救急車に…
陽翔はいなかった…!
くそ!」
「親父さん、すみません…!」
「……いや、涼太くんのせいじゃない。
怪我も幸いそこまで深くないらしい。
生活にも野球にも支障はないよ」
「そ、それより陽翔を助けに行かないと…!」
勝はふるふると顔を振り、ポケットから陽翔のデバイスを取り出した。
「それ…!」
「涼太くんの落ちてたみたいだ…
くそ!陽翔をどこに…
…今歌舞伎町をしらみつぶしに探している…
万事休す…か」
「万事休す?そんなこともないわよ」
「君は…」
——————
「やめろ、離せ」
「あーっと、そんな急かすなよ、竜胆陽翔。
時間はたーっぷりあるんだから」
陽翔が目を覚ました場所は営業前のホストクラブのようだった。
「今日はお前のために貸し切りにしたんだ。
助けを呼んでも来ないぞ〜?」
「……!」
「竜胆くんさぁ、海外出稼ぎって知ってっか?
いやぁ、規格外の金持ちってのはなにをしたがるかわからないねぇ…」
「なに言ってるんだ」
「今日は時間たっぷりあるから楽しもうや。
拷問のオールコールだ!
なんちゃってなぁ」
そう言い、仙はバールを手にした。
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もう何時間経ったんだろうか。
「おいおい、我慢すんなよ。
もっといい声で叫べるだろ」
「………っ」
陽翔は苦痛に顔を歪めた。
しかし、ここで折れては絶対にダメだと言い聞かせて仙を睨む。
「まだ、そんな目ができるなんてな。おじさん感動しちゃったよ。
でもま〜一通りやっちまったからなぁ…
仙さんの姫より、根性があるな。
さすがはヒーロー様だぜ。
でも、ま、もういいわ。
海外にでも飛ばすか。
あっちじゃ少年も需要あるしな。
アラビアあたりならお前を欲しがる奴はごまんといるだろうよ。
おい、空港の手配をしろ」
「はーい」
仙は黒服に指示を出す。
黒服は幼少に近づき、耳元で囁いた。
「大丈夫。私が逃がしてあげる」
「は」
「何やってる」
「水沼仙ね。
私は特殊警察部隊のラナ。
あなたを殺人未遂の容疑で、逮捕します」
「なんだ、お前、どうやってわかった!?
いつの間に」
「あはは、あなたのことずっと調べてたわ。
アザミさんを殴ったあの日から。
私は潜入が得意なのよ。
ここまで来るなんて、簡単だったわ」
陽翔、遅くなってごめんね」
特殊部隊…?
ラナ…
デバイスに入ってた、名前…?
薄れゆく意識なかで、陽翔はラナの背中を見て、わずかながらに安堵した。
オールコール:従業員全員でコールをすること
姫:お客様のこと
海外出稼ぎ:実際にあるものです。
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