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107話 釣りに行こう



「陽翔、眠れないの?」




「ん…」




陽翔は窓から見える夜空を眺めていた。




「眠れないなら、ホットミルクでも飲む?」




「大丈夫。ありがと」




「じゃあ、先に寝るね…」




こうきは気にしつつ、先に床についた。



なにがあるというわけではないが、なんとなく寝付けなかった。




「きちんと5人そろったんだもんな」




最初デバイスをもらったときから、だいぶ時間が経ったかのように思えた。



途中から仲間探しより、ゆうりを引き戻すことばかりに夢中になっていたが、こうして無事に5人集まったのだ。





まさか、涼太以外ほとんどはじめましての人間とヒーローをやるだなんて最初は思わなかった。




あの頃より自分は成長できただろうか。





「寝よ」




陽翔はそうつぶやき、布団を頭まで被った。





翌朝。





「おい!起きろー!!」




カンカン!と鍋とお玉を鳴らす音に驚き、陽翔とこうきは飛び起きた。




「な、なんだ…!?」




「襲撃…!?」




「んなわけないだろ」




あおいが呆れたように笑った。





「あおいか……」




「これからさ、キャンプ行かない?」




は?キャンプ?と陽翔とこうきはハテナマークを浮かべた。





「そう。

せっかく5人揃ったんだから、チームワーク深めようぜ。



涼太は車の中で拘束してる。


これからラナちゃん迎えに行くよ」




「涼太—-…!」





「よし、行くぞ!」




その後、ラナも叩き起こし5人で山へと向かった。




「朝早くからなんなの……」




「ねむ………」




ラナは呆れ、涼太はもう今にも寝そうだった。




「よいしょ」



「あ、陽翔、何持って来たんだ?」




陽翔は重そうなクーラーボックスを地面に置き、蓋を開け涼太に見せた。




「牛乳」




「だよな」




一応聞いたはいいもののやっぱりそうだった。

全て牛乳だった。




「じゃあまずはみんなで釣りでもするか」




あおいが全員分の釣竿を渡し、少しだけばらけて釣りをすることにした。





「わ、わ!

引っ張られてる!」




ラナが1匹釣り上げ、バケツに入れる。

ラナはキラキラした目で魚を見つめた。





「よし、3匹目」




「涼太は器用だな…」





こうきは、僕は全然釣れそうにないなーと笑った。

涼太はどんどん釣り上げては逃がすを繰り返してた。





「陽翔はー?どんなかんじ?」




あおいが少し離れた場所に行き、陽翔に声をかけた。




「こら離せって」




「陽翔ーーー!!!」




釣竿の先端を熊にかじられ、陽翔はやめろよと冷静に釣竿を引っ張っていた。




「陽翔!陽翔!

熊だよ、熊!!」




「わかってるよ、こら邪魔するな」




「なんでそんな冷静なんだよ!!!」




あおいの大声で興奮したのか、熊は唸り声を上げた。




「やべ…!」




「なんか怒ってるな」





「おーい、2人とも」




「なにして………え?」




なにかあったのか、と寄ってきた涼太とこうきも目の前にいる熊にギョッとした。




「ちょ、どうするんだよ、なんかすごい興奮してるぞ!?」




「おおお、おち、おちつ、おつ、落ち着こう」




「こうきが1番落ち着け!」





「おい、お前がいると釣りできないだろ」





「陽翔ーーー!!!」




熊が興奮し、襲いかかってくる。





「「「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!!」」」




陽翔以外の3人は叫び、思わず背を向けて走り出してしまった。




「かわいい、私が釣り上げたんだー…」




ラナはそんなこと露知らず、いまだに釣れたことに感動していた。




「3人が鬼ごっこしてるうちに釣るか」




「「「陽翔ーーー!!」」」




「陽翔!そっち行ったぞ!?」




「え?」




陽翔は振り返ると、確かに熊がこちらに向かってきていた。




「わっ!?」




思わず釣竿を盾にし、押し倒された。




「陽翔!」




こうきは持ってきていた剣を熊の横腹に突き刺した。

勢いよく引き抜くと、熊は悲鳴をあげた。




「あっ!」





熊は逃げる際、陽翔のクーラーボックスのショルダーを引っ掛けたまま逃げてしまった。





「お前剣いつも持ち歩いてるの?」




「うるさいな」




「陽翔!

大丈夫か!?」





3人は陽翔に怪我がないか尋ねると、陽翔は低い声でつぶやいた。





「あいつ…!みんなで飲むはずだった牛乳を…!」




「え?そこ?」




「絶対に取り返す!」




「待て待て待て、やめとけ!!」




「陽翔ー!!」




「昔からああなんだ………」




熊を追いかけて陽翔は山の中に入ってしまった。




「あいつ迷子になったらどうすんだ!」




「俺たちも行くしかないよな」




「キャンプに来たのにいきなりサバイバル………」





「あの熊どこ行った」




陽翔はクーラーボックスが引きずられた跡を辿った。





「あ」




クーラーボックスは強い力で壊されており、小さな子グマ2匹がパックを引き裂き不器用に牛乳を飲んでいた。





「…………」





「お前ら兄妹なのか」




子グマは低い声で鳴き、母熊は出血でぐったりしていた。





「しょうがないな」




陽翔は来ていたパーカーを脱ぎ、熊の止血をした。





熊は痛そうに鳴き声をあげた。

陽翔は、クーラーボックスから一歩牛乳を取り、熊の口にそっと流し込んだ。




「さっきはごめんな」








「陽翔ー!?

もぉやだぁ、なんでウルトラハイパー美少女のあおいちゃんがこんな泥の中を…」




「あ、陽翔!陽翔無事か!」




「涼太。

こうきにあおいも」




どうしたの?と首を傾げる陽翔に掴みかかろうとするあおいを涼太は必死に止めた。





「あ…母熊だったんだね。

非礼を詫びます」




こうきは申し訳なさそうに熊にお辞儀をした。

熊は別に気にしていないといったように唸った。




「じゃ、帰るか」




「うん。またね」




陽翔はバイバイと子グマに手を振るとギャッと声を上げた。





「かわいかったなー子グマ」




「かわいくねぇよ、もー!

予定が台無しだよ」




あおいは、頭を抱えてもう帰りたい!と叫んだ。





帰りの車にて。





「あのさ」




「なんだよ」




あおいは運転しながら、陽翔の言葉に耳を傾けた。




「あのクーラーボックス、親父の8万するやつだった」




シン…と車内は静まり返り、あおいはBGMの音量をあげた。





「えへへ、名前は鮭茶漬けにしよっ」




ラナだけ無邪気に釣った魚に名前をつけ楽しかったね!と言った。

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