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106話 








『なに言ってるの?』




『だからぁ!

アンタの妹は美味だったと言っているの!』




百合は画面が割れた妹が使っていたスマホを地面に投げた。




「…………そんな………」





『赤井マリアも死んだ事にしといたから。

アンタはもうミヤコとして生きるしかないわね〜。

あーあ、本名がないなんて人生詰みね詰み』





『さよならー赤井マリアさん。

禍福は糾える縄の如し!』




きゃははは!と、百合は笑い、ミヤコはその場に座り込んだ。




「全く…

最後まで言わないつもりだったのに」



「言わずにからかってる方が、性格悪い」




「………

あのタイプはこれから爆発しますよ、私が大変なんですからね」




妹やカニバリズムの話は伏せておくつもりだった梅は百合に悪態をついた。




「女を依存させるのが、お前の特技だろ」




「そんなことありません、人聞き悪い!」





「はー全く………

彼女は有能だし、手放す気はなかったのに………

これを知られたらまた囲い込まなければ……」




こうきくんのときだって大変だったのに、と愚痴をこぼした。




「もう充分だろ」




「わかってませんね。

彼女は元々真面目な頭のいい女性です」





「ふーん」




「あのような人材、なかなかいませんよ。

姉妹を思う美しい心、献身的な思考。

それに伴った器用な腕、きちんと頭脳も優秀です」




「興味無」




「……まぁいいです」




「腹立たしいな」




百合は梅をバッグで殴った。




「はいはい、後ほどたっぷりお仕置きは受けますからね」




梅はめんどくさそうに天井を仰いだ。




「……………」




先程百合と話していた場所からまだ動けなかった。

じっ、ともう動かないスマホを見つめた。





「…………許せない」





ミヤコは立ち上がり、梅の愛用するメスを持ち出した。





百合と梅が話している部屋の扉を勢いよく開けた。

ミヤコの手にするメスを見たとき、百合は「あっ」と声を上げた。




『やめときなさいよ』




「うるさい!」





「ちょっと」





梅の声が無機質に響いた。





「私の愛用する彫刻刀で、なにするつもりですか?」




「あーあ」





「あ………」




「もう一度聞きますね。



私の彫刻刀で、なにをする気ですか?」




「あ…………」




カランと音を立て、メスを落とした。



「ごめんなさい、魔がさして…………」




「そうなんですね。

なぜ、私の彫刻刀で?」




「それは……………」




「包丁やナイフ、ありましたよね??」





手が震えて冷や汗が止まらない。




「き、嫌わらないでください」




「前言撤回しますよ。

貴方はすごいお馬鹿さんだ」




はぁ、とため息を吐く梅にミヤコは土下座をした。




「なんでもします、どんなことでも!

だから嫌わないで、私にはもう梅様しかいないんです」




「はぁ…………」





それから宣言通り、ミヤコはなんでもした。

梅からまた笑顔を向けてもらえるように、必要としてもらうために。






————-





日向は黙って空を見ながら聞いていた。





「でも、もう無理………

疲れた」




「そっか………」




日向はそれ以上なにも言わなかった。




「なにをしてるのかしらね」




もうあれから4年経ってしまったわ、と笑った。





「4年…僕は受験勉強に忙しかったな」




「勉強熱心だったのね」




「いや、僕はミヤコちゃんやゆうりくんみたいに頭良くないから、はやめにやってただけ」





「そう」




「そろそろ帰ろうか」




日向は立ち上がり、ミヤコに手を伸ばした。

ミヤコはそっと手を取り立ち上がる。





「今日は私がなにか作るわ」




「そう?」




「なにがいい?」




「え………うーん…………」




「………まぁいいわ。

色々作るから、好きなの見つけていきましょ」




「うん」





日向は少し驚いた表情を浮かべ、ミヤコはそれを見て穏やかに笑った。

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