幸せな日常
「莉亜、ただいま。」
王都を出発してから数日。僕は莉亜へのお土産を持ってやっと屋敷に帰ってきた。
「あ、優真くん! おかえり。」
屋敷に着くと莉亜が明るく迎えてくれた。
「莉亜、これお土産。」
「ん、ありがと! 見せてー!」
「ドーナツだよ。」
莉亜なら絶対喜んでくれると思っていたけれど、いざ見せるとなると少し緊張しちゃう。
「あ、これ知ってる! めっちゃ美味しいって評判のやつだよ~!」
「そうなの?」
何にも知らなかった。
「うん、食べてみたかったの。ありがとー!」
「それなら良かった。」
幸せそうな莉亜の笑顔はいつ見ても飽きることがない。しかも今日は久しぶりだし。
「あ、そうだ。私もね、優真くんに伝えたいことあるの!」
「…………?」
「見て、これ。」
そう言って莉亜が取り出したのは小さな小瓶だった。中には液体? に浸かった薬草っぽいものが入っている。
「……薬草?」
「うんとね、メインは薬草じゃなくてこっちの液体の方だよ。回復薬、作ってみたの!」
「回復薬?」
そんなもの、この世界にあったっけ。
「うん。作ってみたの。薬草の配合とか、魔力の調整とか頑張ったんだよ。」
「配合? ……莉亜が考えたってこと?」
「…………?うん。だってお手本ないし。」
「……新しく作ったってこと……?」
何でもないように言ってるけど大変なことじゃない?すごいことじゃない?
「聖女が一人一人治してくのにも限界があるからね。これはだいたいの傷なら直せちゃうんだよ。優真くんが頑張ってる時に私も頑張ったんだから!」
「莉亜は優しいね。怪我してる人のために……。」
回復薬の開発なんて頑張ったどころの話じゃないと思う。ずっと前からやってたし……。そんな、莉亜の優しいところが僕は大好きだ。
***
あれから数ヶ月。莉亜が作った回復薬はこの領地でだいぶ普及してきた。今も莉亜は回復薬作りに追われている。聖女以外の人も製造出来るようになったらいいんだけどね……。莉亜によると、聖女の魔力を込める必要があるらしい。
そろそろ休憩の時間かな? 今日は下町に行ってクッキーを買いに行く約束をしている。忙しくてたまにしか行けないけど、その分喜びは格別だ。莉亜のところ行こ――。
「――動かないでください。」
そう、背後から声が聞こえ、僕の首に冷たいものが突き立てられた。




