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自殺しようとする同級生を助けたら乙女ゲームの世界の王子になりました  作者: 夜月海歌


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王都での再会


 久しぶりの王都は、思ったよりも騒がしかった。

書類の提出も無事に終え、僕は下町で莉亜へのお土産を探していた。


「どこにしよ――。」


 莉亜が1番喜ぶものは何だろう。薬草もいいし本も喜びそうだよね。ネックレスとかのアクセサリーも喜びそうだし……。



 ***


「ありがとうございました。」


 僕は結局パティスリーに行った。

 王都限定のキャラメルドーナツ。スイーツが好きだって言ってたし、喜んでくれるといいけど。


「…………きゃっ!」


 軽い衝撃と同時に、誰かの小さな悲鳴が響いた。


 前を見ると、淡い色のスカートを着た少女が石畳に座り込んでいた。


「すみません! 大丈夫ですか……?」


 僕は慌てて立ち上がってから少女に手を差し伸べた。


「ありがとうございます……。」

「…………っ!」


 ――セレスティアだ。

 目の前のか弱そうな少女は、間違いなくセレスティアだった。


「すみませんっ!! 前見てなくて……。お貴族様、ですよね? 本当にすみません!」


 僕は呆然とすることしか出来なかった。

 当然だけど、彼女は何も覚えていない。


 僕がレオンという名前だと知らないし、彼女は平民として生きている。分かっていたはずなのに、頭を殴られた気分になった。


「…………? もしかして、どこかでお会いしたことありますか……? すみません、小さい頃のことあまり覚えてなくて……。」

「……会ったことないよ。」


 その視線は、僕ではなく貴族を見ていた。彼女の中では生まれた時から平民だ。仕草も言葉も、どこからどう見ても平民の少女だった。


「あの、本当にすみません!! お貴族様に当たるなんて……。次から気をつけます、もう絶対ぶつからないようにします……!」

「……覚えてないんだよね。」

「ふぇ?」

「……いや、なんでもないよ。」


「セレナー!早くしないと置いてくよー!」


 その時、前方から明るい声が聞こえた。


「あ、行かなきゃ。すみません、失礼します!!待って、レラ!!」


 そう言って、セレスティアはその人のところへ向かっていった。彼女は振り返らずにかけていった。その背中は、もう僕が知らない世界にあった。


 彼女の笑い声は、軽くて明るかった。何も背負っていない、純粋な少女の笑い声。まるで、彼女と出会った時みたいな。それだけで十分。これで良かった。僕は自分にそう言い聞かせながらドーナツが入った袋を持ち直した。

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