借りは返すもの
廊下の角を曲がると、壁にもたれるようにエリックが立っていた。
「……聞いていたのか?」
「途中からな。」
隠す気は無いらしい。どこから聞かれてたのかな。
「……迷惑かけてごめん。」
エリックが協力してくれなかったら……こんな結末にはならなかっただろう。僕は間違いなく彼に救われた。
「もう過ぎたことだよ。あ、でも借りは返して貰うからな。」
「……ああ。」
この優しさに、僕は何度助けられたんだろう。
「それで? 本当はどう思ってるんだ?」
「え……? だから、僕に国王は向いてないから……。」
「俺にまで嘘つくなよ。1番は、それじゃないだろう?」
「……なんで、」
「隠し通せると思うほうが馬鹿だろ。……そんなに俺のことが信用できないか?」
「エリックのことは信用してるよ。でも、自分のことが、信用できない、っていうか……。」
父にも、弟にも言えなかった本音。でも、エリックになら、親友になら言える気がした。
「自分の大事なものを手放したくない。王国だって大事だよ。でも、もしどっちかしか選べない状況になったら? 僕はその時、国のために決断できるなんて断言できない。僕はどっちも捨てたくない。欲張りなんだよ。」
「欲張りなのは昔からだろ。」
そうかな。……いや、そうだね。うん、認めます……。
「今のお前の悪いところはな、欲張りなところじゃない。自分の決断に保険かけてるとこだろ。」
保険ね……。……自分が嫌になるな。
「王になるもならないも勝手にすればいい。でも、自分で選んだんなら胸張れよ。」
簡単に言うなよ、と思う。でも、その言葉は不思議と重くはなかった。
「……そんな簡単な話じゃないよ。」
「知ってる。」
彼らしい即答だった。……僕は悩みすぎてるんだろうな。
「簡単なら、お前がこんな顔してねぇだろ。」
思わず顔を触る。そんなに分かりやすいのか。
「別に王にならなくてもいい。けどな、逃げたみたいな顔するな。目障り。」
「……さすがに酷くない?」
「それくらい酷い顔してたぞ。大好きな人の前で、そんな顔見せるなよ。」
「はいはい。」
にやにやした顔、むかつく。
……でも、彼に僕は何回助けられたんだろう。
一生かけて借りは返さないとね。




