これからのこと
夜は静かだった。
遠くで虫が鳴いて、暖炉の火が小さく爆ぜる音だけが、この部屋に満ちている。
「……本当に、終わったんだね。」
ぽつりと零したのは、隣に座る莉亜だった。
彼女は窓の外を見ながら、どこか不思議そうに笑っている。
「うん、全部終わったよ。」
そう答えながら、僕は自分の声が驚くほど穏やかなことに気づいた。セレスティアはあの後、記憶の消去魔法が行われてから平民として過ごしている。会ってはいないけど、幸せに過ごしていたらいいな、と思う。処罰も、復讐も、過去も――もう、戻ってくることはない。
「ねえ、優真くん。」
「なに?」
「……これから、どうするの?」
問いかけは軽い。
未来を試すような不安も、覚悟も含まれていない。ただの会話だ。
「うーん、どうしよう?」
「え?」
「日にちなんて気づいたらすぐ過ぎてくよ。」
莉亜は一瞬きょとんとして、それから小さく笑った。
「それ、すごく優真くんらしい。」
「そうかな、?」
「うん。……優真くんは今幸せ?」
彼女は一呼吸してから、僕に問いかけた。
「今は……。」
「今は……?」
言葉を探して、少し間が空く。
「幸せだよ。君と話していられるから。」
「ふふっ、そっか。私も幸せ。」
莉亜は冗談みたいに言ったけれど、その声は柔らかかった。
「永遠に続いてほしいな。」
「……?何が……?」
「ううん、なんでもない。」
莉亜との幸せ。ずっと手に入りそうで入らなかったもの。ようやく手に入ったんだ。何があっても、もう彼女の手は離さない。そうしたら、幸せはずっと続くはず――。
「ねえ、優真くん。」
「…………なあに?」
「……明日もそばにいてね?」
「もちろん。居なくなったりなんてしないよ。」
これからも困難はあるかもしれない。でも、きっとふたりでなら大丈夫。また一緒に乗り越えれるはず。




