耐えきれない後悔
「……や、いや……。」
「……なん、で……。」
彼女は壊れたロボットみたいに、同じような言葉を繰り返していた。涙が流れ続けてるし、目も虚ろで焦点が定まってない。……そうだよね、そうなっちゃうよ。大丈夫、いくらでも待つから――。
「……レオン様、私っ……。」
「……どうしたの?」
「……ごめん、なさいっ、……っ。」
――!
「……私っ、私っ、……。」
「……うん。」
聞いてあげることしかできないけど。それでも、それが僕が彼女にしてあげられる最大限のことだと思う。
「……私っ、レオン様にっ……。」
「ゆっくりでいいよ、待つから。」
「……っ、……うっ。」
莉亜を傷つけたことは絶対許さない。たぶん、一生許せないと思う。……でも、彼女の笑顔とか花にですら見せる優しさとかそういうものも彼女の一部な訳で。彼女の全てを嫌いになりたくはない。だって今目の前にいるのは自分の罪に押し潰されそうな華奢な少女なのだから。……あの時の莉亜みたい。もし運命が少しでも違えば、今ここにいるのが莉亜だったかもしれないのだ。実際そうなったかもしれないし。想像ができないけど、そんな道もあったのかなと思う。
「……レオン様、待ってくださりありがとうございます。私、決めました。」
彼女は真剣な顔で、もう彼女の顔に涙は光ってなかった。全て受け入れられたのかな、その僕の期待はすぐに裏切られた。
「私を、殺してください。」
「……!?――僕はしない。」
「……なんで……。」
――殺そうと思えば殺せる。魔法を使えばすぐだし、彼女は抵抗もしないだろう。父にも、セレスティアの処罰は好きにしろ、と言われた。僕がセレスティアを殺しても、罰されることはない。
……でも、僕は彼女を殺したくない。彼女の可能性を信じているから。
「私のこと、憎んでいるでしょう?嫌いでしょう?私を殺したら、少しは気が楽になると思いませんか?それに、……。これは私自身のためですけど、あなたがいないなら、もう生きている意味などないのですよ。それなら、あなたに殺してもらった方が幸せなのです。」
「憎んでないし、嫌いじゃないよ。――だから、生きて。」
殺されたいと嘯く彼女はとても幸せそうに見える。わかる、わかってしまう、死んでしまいたいという思いが。莉亜がいないと思った時、同じことを思った。それにもしも莉亜を傷つけてしまったら、僕は同じことを思うだろう。何もしても大好きな人に辛い思いをさせた過去は変えられないしその傷が完全に癒えることはない。そうなったら、自分が相手に会う資格なんてないし、生きる資格すらないと思ってしまう。逃げるために死ぬんじゃなくて向き合うために死にたいと願う。……そんな彼女に生きて欲しいなんてすごくすごく残酷なお願いだ。死にたいと思う時は、本能的な死への恐怖にでさえ生きる苦しみが打ち勝ってしまっているのだから。
「……レオンさま、おねがいしますっ……。もう、むり、です。……ごめんなさい、ごめんなさいっ……。こんなにんげん、いきてちゃだめ、ですよね……。だから、ころしてください。いまのわたしにはそれしかできないんです。おねがいしますっ……。」
「……ごめん。」
「……え?」
「……もっと早く止めてれば良かったんだよね。ごめん、何も出来な――」
「レオン様は悪くないです。全部、全部私がしたことです。だから、ご自分のことを責めないでください。」
「でも……」
「レオン様、お願いです。」
「…………。」
真っ直ぐな瞳で言われると、それ以上何も言うことが出来なかった。




