遅すぎる気づき
「……セレスティア。」
地下牢に行くと、彼女はとても期待に満ちた目でこちらを見てきた。僕はまだ彼女を許せない。……だから、復讐くらいはするつもりだ。度を超えることはしないけどね?でも、自分の罪を自覚させるくらいならいいよね。
「……レオン様!私を助けに来てくれたのですか?」
僕の嫌悪感なんて、1ミリも知らなそうな顔。記憶を覗かれたのに、まだ自分の罪に気づいてないの?
「僕が助けに来たと思うの?」
質問って質問で返しちゃだめなんだっけ。でもいっか。莉亜の善意を悪意で返したような人なんだから。
「ええ。だから来たんでしょう?私、いつかレオン様がリアナ様の洗脳に気づいてくれるって信じてました。」
「洗脳?」
「……?リアナ様がレオン様を洗脳していたんでしょう?でなければあの方を好きになることなんてありませんよ。気づけていただいて良かったです。」
何それ、意味わかんない。セレスティアの言ってることが、本気で理解できない。
「私、レオン様のことが大好きです。だから、やっと振り向いてもらえて良かった。私、レオン様のために頑張ったんですよ?リアナ様が処刑されるようにするために、毒まで飲んだんですから。今は捕まってしまいましたけど、レオン様が何とかしてくれるんでしょう?なら安心ですわ。レオン様のためになって良かった――」
「……僕のため?」
「…………?ええ。」
本気で寒気がした。莉亜を傷つけて、どこが僕のためだと言うのだろう。誰かが苦しんで、それで嬉しいなんて誰が思う。そんなの、考えただけで息が詰まりそうになるほど辛いのに。
「……辛かったよ。」
「…………?」
「……大好きな人がどんどん追い込まれているのを見るだけで何も出来なくて。彼女は全部一人で抱え込もうとして、僕は何も頼りになれなかった。君にですら迷惑かけたくない、って言って誰にも助けを求めないで、ただひたすら耐えてた。そんな、強くて優しい彼女をどれだけ傷つけたら気が済むの?」
「……ちが――」
「リアナだけじゃない、僕も傷ついたよ。リアナの傷に比べたら比べ物にならないほどちっぽけかもしれないけど。……でも、辛かった。大好きな人が弱っていくのを見るんだよ。そんなの、耐えられるわけがなかった。辛くて苦しくて死にたくなりそうで。」
「……っ。レオン様が、?」
彼女が動揺していることで、僕はようやく気づいた。彼女は本当に何も分かってなかったんだなと――。ただリアナを陥れて僕を独り占めしたかった。リアナの幸せも僕の考えも何も想像することなく行動してしまったのだろう。なんと浅はかで無知な行為か。僕が言えたことではないけど、愛は全てを壊すんだなあって。
「……私、あなたが大好きだっただけ――」
「うん?大好きだったらほかの誰かを蹴落とすことが許されるの?」
「……レオン様を傷つけたなんて、私、どうすれば――」
「どうするって、何しても罪は消えないよ。たとえ償っても、相手の心の傷は一生残り続けるんだから。――それと、償うべき相手は僕じゃなくてリアナだから。次間違えたら――許さないからね。」
「……っ。」
やっと自分の罪を理解したんだね。遅すぎるよ。……でも、莉亜が優しい人で良かったね。苦しまずに済んだよ。あいにく、僕は優しくないけどね――。




