ふたりで一緒に
しばらくして、莉亜が名残惜しそうに腕を緩めた。
「……ねえ、優真くん。」
その声が少しだけ低くなって、空気が変わる。
「うん?」
莉亜は僕の胸元から顔を上げて、さっきまでの笑顔よりも、少し真剣な目をしていた。
「無理、したでしょ。」
疑問じゃなくて、確信。
「……。」
一瞬、言葉に詰まる。誤魔化そうと思えばできた。でも、その目を見てたら、出来なかった。
「……した。」
正直に言うと、莉亜は怒らなかった。ただ、小さく息を吐いた。
「やっぱり。」
そう言って、今度は僕の手をぎゅっと握る。
「ね、優真くん。私ね……閉じ込められてた時、ずっと考えてたの。」
「何を?」
「優真くんが、無茶してないかなって。」
胸が、きゅっと痛む。
「私のせいで、優真くんが苦しむのだけは嫌だった。」
……ああ。僕が守りたかった人は、同じくらい僕のことを考えてたんだ。
「ごめん。」
今度は、ちゃんと口に出した。
「ううん。」
莉亜は首を振る。
「守ろうとしてくれたことは、嬉しい。すごく。」
そう言ってから、少しだけ困ったように笑った。
「でもね……一人で全部背負わなくていいんだよ。」
その言葉が、静かに胸に落ちた。
「私も経験あるから偉そうに言えないんだけどね……。でも、私弱いけど……優真くんの隣にいるくらいは、出来るから。」
握られた手が、温かい。
「次はね。」
莉亜は、はっきりと言った。
「次は一緒に考えよう。二人で。」
「……うん。」
返事をしながら、思った。もう自分を犠牲にした考え方はだめだって。
「ありがとう、莉亜。」
そう言うと、莉亜は少し照れたように視線を逸らして、
「どういたしまして。」
と、小さく答えた。そして、ぽつりと付け足す。
「……でも、私のためでも自分の命を最優先にするんだよ?」
「……肝に銘じます。」
「よろしい。」
そう言って、また軽く笑った。またきっと困難だってある。でも莉亜と2人ならなんとかなる気がした。それだけで、世界は昨日よりも少し優しく見える。




