父の誇り
父は、しばらく黙っていてくれた。なぜか、その沈黙がいつもよりも暖かいと感じた。
「レオン。」
呼ばれて、背筋が自然と伸びる。
「お前のしたことは――王子としては、浅はかな行為だ。」
はっきりとした断言。胸の奥が、静かに沈んだ。
「感情を優先し、立場を顧みず、秩序を揺るがしかねない行動を取った。結果がどうであれ、それは許されることではない。」
……やっぱり、そうだよね。分かってた。脱獄の手助け、王命に背く……。だめだよね、殺されてもおかしくなかったもん。それぐらいの罪だよね。自覚はしてます。正しい方法で助けるべきだったんでしょうね……。反省してます。
「お前が守ろうとしたのは一人だ。だが、王族は常に多くを背負わねばならない。その自覚を欠いた行為だった。」
王としての言葉。冷静で、正しくて、逃げ場がない。
父はそこで一度、息を吐いた。ほんのわずかだけ、声音が変わった。
「……だが。」
その一言に、思わず顔を上げてしまった。
「人として、自分の信念を諦めなかった。その点においては――」
父は、少しだけ言葉に迷ったようだった。
「……父として、誇りに思う。」
思考が、止まった。
誇り?今、そう言った……?
「……私は、お前のようには出来なかった。」
父は視線を逸らし、遠くを見るように続ける。
「自分の気持ちに素直に行動できなかったことが何度もある。」
その声は、どこか静かに擦り切れていた。
「だから、お前の行動は間違っていたかもしれない。でも、その心は、どうか大人になっても失わないでほしい。」
僕のしたことは、思ったことは間違ってなかったの?……そう、父は認めてくれるの?
「勘違いするな、レオン」
父の声が、少しだけ強くなる。
「次に同じことをすれば、もう助けられないかもしれない。」
それから、ほんの一瞬だけ。
「……だが。」
それに続く言葉は聞き取れないくらいの小さな声だった。
「お前は1度決めたら私の言葉なんてお構い無しに行動するんだろうな。」
その言葉を、僕はどう受け取ればよかったんだろう。呆れなのか一種の憧れなのか。僕には分からないけど、少しだけ、父が僕のことを理解してくれた気がした。だって、きっとそうするから。莉亜のことなら、また同じように行動する気がする。
僕はなんて返せばいいか分からなくて、ただ静かに頭を下げた。そしてそのまま、久しぶりに大好きな人に会うために歩き出した。




