噛み合うことのない優しさ
「……久しぶりだな。」
「お久しぶりです、父上。」
真っ赤に燃えるような瞳は、優しそうで、でもその中に少しだけ悲しみが滲んでいた。心が痛む。
「……体調は良くなったか?」
「はい、もう身体は治りました。」
心配してくれてたのかな、言うこと聞かずに逃げて怪我したのも自業自得みたいな僕のことを、?僕って親不孝な子供だね。ごめんなさい、本当に。今もそうだし、前世の親にも――。何もしてあげられなかったし、親より先に死んじゃった。僕は最低な人間だよ。でもね、自分よりも大切な人ができたんだ。お母さん、お父さん、こんな僕を赦してくれますか――?なんとなくだけど、あの二人なら僕を赦してくれる気がした。
――今は、向き合わなきゃいけない。目の前の父親――国王に。僕は、後悔しないように最善を尽くすだけだ。
「……父上、お願いがあります。」
「…………。」
返事はなかった。……でも、聞いてくれるだけでいい。目的が達成されれば他は些細なことに過ぎないのだから。
「セレスティアを、記憶魔法で調べていただけませんか。」
「……それはできない。」
「リアナの部屋に毒があったのは、他の誰かが彼女の部屋に持ち込んだ可能性があります。他に有力な証拠がある訳でもない。本人が否定している以上、1度調べ直すべきです。」
「もう終わったことだ。」
「終わっていません。何もしていない人が罰されていいわけが無い。父上は、そのようなことがあっても仕方ない――そうお考えなのですか?」
「……お前は罪を重くしたいのか?王国の決断に歯向かう発言は控えろ。」
「諦めるつもりはありません。調べてセレスティアが嘘をついていないなら、責任は負います。だから、お願いします。」
「……レオン。お前には辛い思いをさせたと思っている。婚約がなければ、愛する人と幸せに結ばれただろう。……本当は、お前にそうさせたかった。……でも、王族は自分のことよりも国のことを考えなくてはいけない。時には、辛い決断をしなければいけない時もあるのだよ。」
ああ、何も分かってないよ。僕は、別に莉亜と結ばれなくてもいい。もちろん、その方が嬉しいけど、立場は弁えているつもりだ。……ただ莉亜が傷ついていることが許せなかった。彼女に罪を着せて、彼女の優しい心を追い詰めて。そのことが許せなかった。彼女を助けてあげたかった。ただそれだけなんだよ。今もそう。セレスティアのこと調べたら莉亜は救われるのに。そんなことですらしてくれないんだね。たぶん、もう父と分かり合うことは無理だと思う。
……僕はどうしたら父を説得できるのかな。




