諦めるために
「ねえ、騎士さん。リアナは、その後どうなったの?」
もし莉亜が生きているなら。それなら彼女は今どうしているのだろう。今すぐにでも会いたいけど、そうはさせてくれないんだろうな。
「リアナ様は、殿下と同じように地下牢にいます。処刑されることはありません。」
「そう……。」
この人の言うことをどれだけ信用していいのだろう。莉亜が逃げれたかもしれないし殺されているかもしれない。これが本当の情報だなんて言いきれない。僕は与えれらた情報しか得ることができないし、自分で調べることもできない。――この世界なら、罪人に嘘を教えることがあるに決まってる。正確な情報を教えて反抗されたり自殺されたら困る、っていう基準なんだろうね。……人の権利を踏みにじる最低な考え方だよ。
だから、僕は信じれない。信じるのが1番簡単な方法なんだろうけど、それでまた心を削られるかもしれない。それくらいなら、信じない方がいいよ。もう何も信じれない。……自分の感情ですら信じれない。
「……リアナに会うことはできる?」
期待なんてしてない。でも、諦めきれないから、聞くしかない。諦めるために聞くなんて、質問とは言えないよね。
「……私は分かりません。確認しますか?」
「……いいよ、しなくて。」
もういいよ、嘘なら嘘って言ってくれればいいのに。リアナが生きてるって伝えろと言われました、って言ってよ。君のことは恨んでないから。希望を持たせてくるのが、この世で1番残酷なことなんだよ。
「……騎士さん、最後に質問させて。……君は、リアナのことをどう思う?」
卑怯で最低な質問だと自分でも思う。……でも、聞きたい。答えを知りたい。彼女のしたことについてどう思っているのかとか、噂がどれくらい信じられているのかとか全部知りたい。当事者の僕たちでもなく学園の人でもなく、第三者の大人の視点が知りたい。
「……リアナ様のことですか?」
「うん、何でもいいよ。怒んないから、ほんとのこと言って。」
騎士はこちらの様子を伺っている。僕の意図を読んで、正直に答えるのか嘘で取り繕うのか。――僕は嘘が聞きたいわけじゃない。嫌いとかそういうこと言われても怒らないよ。人は多かれ少なかれ人に嫌われる。そんなの、わかってる。他人の思想にどうこういうつもりもない。莉亜が嫌いなら、そう言えばいい。騎士に言ったことは僕の本心だ。
「……私は、嫌いだとは思いません。ただ、環境が不遇であったと……。リアナ様は、自分のことよりも殿下を助けようと努めていました。殿下のことが、本当に本当に大好きなんだと伝わりましたよ。セレスティア様にした行いは良いとは言い難いことです。リアナ様のことを嫌いな方も、たくさんいるでしょう。……ですが、僕はリアナ様が処刑されるほどの悪人だとは思えないのです。」
「……教えてくれてありがとう。」
言葉を選びながら語る騎士の目は、嘘をついているようには見えなかった。莉亜のことを嫌わないでいてくれる人もいる――その事実に僕は少しだけ希望をもてた。




