死ねない理由
「……殿下、リアナ様は殺されていません。」
……何を、言っているのだろう。馬鹿げてる、そう思えるほどには僕は冷静になっていた。
「リアナ様はまだ生きています。だから、どうか命を絶つなんてことしないでください。」
「騎士団がリアナを逃がしたって言いたいの?」
そう問う僕の声はあまりにも乾いていて。でも、それでもいい。その方がいい。このまま感情なんて無くしたい。今はあっても辛いだけだ。……無くしたいけれど、こんな馬鹿みたいな希望に縋っている僕は、まだ感情が残っているんだろう。
「違います。……彼女が、聖女だったのです。聖女を殺すことは……できません。」
聖女……?治癒魔法を使ったのか。……!もしかして、逃げようとして怪我をした?それで治癒魔法を……?
……莉亜を守るって決めたのに。……僕、最悪だよ。また守れなかったじゃん。また莉亜が傷ついた。どうして守れないんだろう、僕が悪いんだよね、わかってる。……でも、神様はどうして莉亜のこと傷つけるの、?僕はいつも傷つかない、傷つけるのは莉亜ばっかり。なんで……、?できることなら僕が全部受けるのに。僕が代わりになるから、莉亜のことは傷つけないでよ。
「……騎士団はリアナに剣を向けたの?それとも殺傷魔法?」
莉亜を傷つけたら、許さないよ。それが殺害を前提とした攻撃なら尚更。
「攻撃していません。」
「……ふざけないでよ。剣すら持ってなくて、戦いの意思がない人に攻撃することがどんなに卑怯かわかる?王命が出たって言うのは知ってるよ。でも、人に命令されたからって人の命を奪うわけ?何にも悪いことをしてない人が死んじゃうんだよ。それってどんなに最低で無意味な行為なんだろう。王命も、間違ってるよ、絶対に。僕は、罪人を連れ出したから罰を受けなきゃいけないと思うよ。でもリアナは?彼女が何をしたって言うの?根拠のない噂を広められて、罪を擦り付けられて、地下牢に入れられて。弁解を聞いてくれる訳でもないし証拠を最後まで調べようともしない。不公平すぎるんだよ。彼女は誰も傷つけていない。それなのに、殺そうとするなんて頭おかしいんじゃない?僕は許さないよ。リアナのこと苦しめた人たちみんな。1人残さず許さない。」
死ぬ前に、呪いかけようかな。禁じられてるけど、もうどうでもいい。ペナルティは魂が少し取られるだけ。どうせ無くなるんだしちょうどいいじゃん。
「……殿下、リアナ様が治癒魔法をかけたのはご自身にではありません。リアナ様は貴方にかけたのですよ。」
……?なんで僕に?あ、そっか、魔法当たったんだった……。
「……リアナ様がいなければ、貴方は助からなかったと思います。」
なんで……、?なんで莉亜は僕なんかに。僕なんか見捨ててほしかった。そうしたら莉亜は逃げれたかもしれないのに。僕が莉亜の幸せを摘んでしまったんだ。ごめん、ごめん莉亜……。
……でも、僕は死ねなくなった。だって、莉亜が助けてくれた命を捨てるなんてことできない。彼女が生きてと言うならば、僕は生きなきゃいけない。




