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ごめんね、莉亜

 剣を振るうたびに、胸の奥がきしんだ。


 本当は、こんなことをしたくない。目の前にいるのは、悪人なんかじゃない。ただ王命を受け、職務を果たしに来ただけの騎士たちだ。彼らの剣に、憎しみはない。ただ、任務を果たしたいだけ。――それが、余計につらい。


「……っ。」


 僕の一撃を受け止めた騎士が、体勢を崩す。倒れかけたその背中を見て、思わず歯を食いしばった。ごめんなさい。本当に、ごめんなさい。あなたを傷つけたいわけじゃない。殺した訳じゃないけど、相手が傷ついているのは事実だ。心の中で何度謝っても、現実は変わらない。僕が剣を振るった事実も、彼が傷ついた事実も消えてくれない。本当に、本当にごめんなさい。――でも、それでも、立ち止まるわけにはいかなかった。


 ここで倒れたら、莉亜が――。その考えだけが、僕の体を動かしていた。


 騎士たちは強い。連携も、判断も、すべてが洗練されている。本気を出せば僕なんかすぐに殺せるんだろうけど、力を抜いているのがわかった。王命で殺せじゃなくて、捕らえろだったからかな?殺そうとはしてこない。時間が経つにつれて、じわじわと包囲が狭まっていく。だんだん追い込んで降参させるのが目的か。気づけば、僕は少しずつ、廃教会の奥へと追い込まれていた。


 ――だめだ。背中が、嫌な汗で濡れる。このままじゃ、莉亜のいる方へ……。


 必死に踏みとどまり、進路を変えようとする。でも、騎士たちはそれを見逃さない。僕を追い込みながら、確実に距離を詰めてくる。


 そのときだった。


「――あ。」


 誰かの視線が、奥に向いた。ほんの一瞬。だけど、確かに。闇魔法が、揺らいだ。見えないはずの場所に、気配が生まれる。莉亜の、存在。


「……莉亜……!」


 叫びそうになるのを、必死でこらえた。だめだ、見ないで。気づかないで。お願いだから――。


 でも、遅かった。


 詠唱の気配。魔法攻撃が、莉亜の方へ向けられる。


「莉亜!危ない!!」


 考えるより先に、体が動いた。防御魔法を展開しながら、僕はその場に割って入った。だめ、莉亜を傷つけないで。彼女はここで死んじゃだめだ。僕はいいから――。莉亜のことは、傷つけないでよ。お願い、お願いだから。


 ……ああ、痛い。痛いよ、身体中が。全身の魔力とか血液が全部破裂したみたいな痛み。魔法ってこんなに痛いんだね、初めて知ったかも。防御魔法間に合わなかったのかな。でも、僕が攻撃魔法受けたってことは莉亜のことは守れたかな?良かった、この痛みを莉亜に知られずに済んで。莉亜、幸せに生きてね。どうか騎士団から逃げて。僕のことなんてどうでもいいから。莉亜、ごめんね。また守れなかったみたい。ごめん、ごめん――。


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