幸せを夢見て
森に風が吹くたび、焚き火の炎が静かに揺れる。帝国まであと2日の距離。それなのに、莉亜はどこかずっと落ち着かない顔をしていた。
「……優真くん。」
「どうしたの?」
「……ごめんね。」
莉亜はか細い声で、でも確かにそう言った。
「…………?」
「……まだ、前世のことちゃんと謝れてなかったなって。」
「……!そうだっけ、?……気にしてないよ。」
「うん、知ってる。優真くんは優しいから、全然そんなこと気にしてないんだろうなって。私を何回も励ましてくれたのだって、嘘じゃなくて本心だろうなって。……でもね、やっぱり気にしちゃうよ。私が優真くんの未来奪っちゃったんだもん。」
「……。」
僕はそのまま莉亜を抱きしめた。彼女は一瞬驚いた顔をしたけれど、すぐに笑ってくれた。……莉亜は笑顔のほうが似合うよ。それから僕は、莉亜に言った、僕の本心を。
「あのね、莉亜。僕はあのまま莉亜の手を離してしまったら絶対後悔したよ。あの時は全然好きとかじゃなくてただのクラスメイトだったけど。それでも、助けれたはずなのに助けれなかった、って後悔したと思う。今は、助けれたかって言ったら微妙だけど、君が生きている。処刑も防げたし、今幸せそうに笑ってる。だから、後悔なんてしてない。今までのことは全部最善の道だって信じてるから。今は大好きだよ、莉亜。」
「優真くんは……ほんとにずるいよ。」
「……どこが?」
「…………もうっ!」
拗ねてる莉亜も可愛いな。……そう思う僕は少しだけ意地悪なのかもしれない。
「ねえ、莉亜。……過去の事じゃなくて未来のこと考えようよ。」
「未来のこと?」
「うん。帝国行ったら何したい?」
「うーん……。あんま考えたことなかったかも。」
「じゃあこれから考えよ。王国よりすごい広いし、発展してると思うよ。帝都行ったら色々あるかも。」
「帝都!?行ってみたい!……優真くんは何したいの?」
「……本読みたいかも。帝国のって、王国のとは別のジャンルとかありそうだし。」
「それもいいかも!じゃあ帝都行ったら絶対読もうね。」
「……なんか、デートみたいだね。」
「……デート!?私たち恋人なの、?」
告ってないから、違うのかも……?でも、僕は莉亜の事が大好きだよ。想いは伝えないとね。僕は莉亜の正面で膝まづいて言った。
「莉亜。君の事が大好きだ。アメジストのように輝いている瞳も、すみれ色の艶のある髪も、真っ白できめ細かい肌も。誰かの為なら全部自分で抱え込もうとする優しさも、人を傷つけられない誠実さも、自分の決めたことを貫こうとする芯の強さも。僕はあなたの全てに心を奪われました。一生、もし転生しても、あなたの傍であなたを幸せにさせると誓います。」
莉亜の顔がどんどん赤くなっていた。可愛い。
「……だから、僕と付き合ってくれませんか?」
「……よろこんで。私も優真くんのこと大好きだよ。」
そう言って莉亜は僕に口付けをした。不意打ちほど可愛いものはないよね。幸せで倒れそう。そんな僕を見て、莉亜はしてやったりって顔で笑っていた。
「……優真くん、ちょっと言いづらいんだけど、あれって結婚の誓いじゃない、?」
「…………。」
次は、僕の顔が赤くなる番だった。
「……帝国に行ったら結婚しようね。」
顔の熱い僕に莉亜が出した助け舟は、僕の思考を停止させるのに十分すぎた。




